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2008年10月26日(日) 21時02分

<石綿工場>周辺住民肺がん死、全国平均の3倍…岐阜・羽島毎日新聞

 アスベスト(石綿)製品を作っていた岐阜県羽島市のニチアス羽島工場の周辺住民の間で、肺がん死が全国平均に比べて約3倍多発していると、大阪府立公衆衛生研究所の熊谷信二生活環境部長が26日、発表した。石綿工場の周辺住民の肺がんに関する本格的疫学調査は初めて。石綿粉じん公害で肺がんが増えている可能性を示すもので、十分に救えていないと指摘されてきた肺がん患者の救済や補償のあり方にも影響しそうだ。

 調査は地元自治会の協力で実施。対象の家族の87%の502家族1907人について、92年〜07年6月末の健康状態などの回答を受け分析。付近の風向、風速や日照時間の記録を、大気汚染研究に使う都市域用の拡散モデルにあてはめ、工場周辺の相対的な石綿濃度を推定した。これを基に四つの濃度レベル地域に分けた。

 このうち最も高濃度の地域は、工場から南東方向に長い楕円(だえん)の地域(直径約520〜300メートル)で、男性は234人が居住。全国平均からは2.72人の肺がん死者が予測される。ところが実際には、仕事で石綿を吸った可能性がある人を除外しても8人にのぼった。死亡率は全国平均の2.9倍で、統計学的に意味あるリスクとなった。

 羽島工場は1943〜03年に石綿製品を製造。91年までは毒性の高い茶石綿も使用した。住民健診では、石綿を吸った証拠となる特有の病変「胸膜肥厚斑(きょうまくひこうはん)」が約50人から発見された。また周辺で少なくとも4人が石綿が原因のがんの一種「中皮腫」で死亡している。

 肺がんはたばこが原因になるため、石綿健康被害救済法や労災の認定基準は厳しく、胸膜肥厚斑の確認か、肺から一定量以上の石綿組織の検出などが要件になっている。たばこの害に詳しい共同研究者の津田敏秀岡山大教授(環境疫学)は「今回の死亡率の高さはたばこだけでは説明できず、石綿の影響以外に考えられない」と話している。【大島秀利、鈴木敬子】

 ▽ニチアス広報チームの話 調査内容を詳しく承知しておらず、コメントできません。

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