「おれは生きとるばい」—。福岡県大牟田市内の駅で倒れ病死と確認された男性(58)の身元を、大牟田署が取り違えていたことが23日、分かった。死亡したとされた男性(61)の弟が火葬を済ませた後に、兄とばったり出くわして発覚。同署があらためて指紋などを調べ間違いが証明された。2人の男性は、日ごろ駅で寝泊まりする生活を送っており、葬儀に駆け付けた親族も顔の違いに気づかなかったという。
「なぜここに…」。葬儀帰りの弟夫婦が見たのは、つい先ほど成仏したはずの兄だった。弟夫婦は、その足で兄を連れ大牟田署へ。死んだことにされた男性は「おれは生きとるばい」と抗議したという。
同署の調べによると17日朝、西鉄大牟田駅で男性が倒れており、搬送先で病死と確認された。警官がこの男性の所持品を探す際、駅の清掃員の女性が「この人、いつもここにおったよ」と指し示した所にあったのがリュックサック。しかし、このリュックは後に死んだことにされる別人男性のものだった。
リュック内には預金通帳があり、同署では名義から男性のいとこを探しあてた。いとこが「親類の通帳です」と認め、顔写真も「間違いない」と断言。だが、そのいとこは男性と8年会っていなかったという。翌18日に行われた葬式には親族7、8人が参列。誰も別人であることを疑わず葬儀は終了した。
しかし、この男性はすぐ復活を遂げることになる。単身赴任先の東京へ戻るために駅に向かった弟が出くわしたのは、永遠の別れを告げたばかりの兄だった。
男性は今回の間違いのきっかけとなったリュックについて「行方不明になった」と話しているという。住む家はあったものの電気も水道も通っておらず、廃屋同然の状態だった。独り身で「こっちの方が人がいてさみしくない」と駅で寝泊まり。亡くなった男性との面識については不明だが、同じ駅で生活し、2人とも「そんなに清潔ではなかった」(同署)という。
両者の顔を見た捜査関係者によると、2人の顔つきは似ていたが亡くなった男性の方が若干やせており、葬儀の際も「ちょっとやせたなあ」という声が出ていたという。
大牟田署からの謝罪を受け、男性の弟は東京からの交通費を要求。だが同署では「うちが来てくれと頼んだ訳ではないので…」と困惑、支払いは検討中としている。一方で千葉在住の姉は「音信不通だったので会えてよかった」と大喜び。男性を千葉に連れて帰ったという。
福岡県警では8月にも遺体の身元取り違えがあったばかりだ。上野恵造副署長は「確認が甘かった。今後徹底したい」と話した。
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