海上自衛隊の特殊部隊養成課程で異動直前に十五人を相手に格闘した三等海曹(25)が死亡した事件で、海自の事故調査委員会が近く公表する中間報告で訓練からの逸脱を認めながらも「送別行事だった」として集団暴行の疑いに否定的な見方を示し、教官らの安全管理の不備を問題視する方針であることが二十日、分かった。
防衛省の
三曹の遺族が「制裁のための体罰ではないか」と真相究明を求め、自衛隊の捜査機関である警務隊が捜査を進める中で、防衛省と海自が当事者である教官や隊員らの聞き取り調査に基づき「事故」の方向性を打ち出し、早期幕引きを図れば、批判が集まるのは必至だ。
防衛省関係者によると、海自調査委の中間報告は、九月九日に行われた十五人相手の格闘訓練について、二日後に養成課程をやめる三曹への「送別行事」で「隊員らの発案で行われた」と位置付け、これまでの聞き取り調査に基づき「集団暴行の意図はなかった」との見方を示している。
その上で調査委は(1)パンチを浴びた三曹がふらついたが、教官らが止めに入らなかった(2)意識を失った際にも、教官らが「熱中症」と判断を誤り、大型病院への搬送が遅れた—など、教官らの安全管理の不十分さを重視しているという。
一方、海自は二十日までに、別の隊員が異動直前に十六人相手の格闘訓練を受けて負傷したのは、七月ではなく五月だったと発表を訂正した。