2008年10月20日(月) 20時25分
世界金融危機の影響が現実に 東京都や大阪府が地方債発行延期(J-CASTニュース)
東京都や大阪府などが2008年10月に計画していた公募地方債の発行を見送った。米国発の金融危機により、「市場環境が悪化したため」(大阪府)に取りやめた。地方債は予算の歳入に組み込んでおり、計画通りに発行できなければ、事業計画の変更や事業者への支払いの延滞、利払いの増加などの財政の悪化を招く要因になる。
■外資系の一部は去り、その分国内金融機関の負担増える
10月債の発行を見送った地方自治体は、東京都、大阪府、愛知県、兵庫県、川崎市、大阪市の6団体、期間5~20年の合計1300億円分だ。
10月15日に、200億円の5年債発行の見送りを発表した大阪府は、債券を引き受けるシンジケート団からも「延期すべきとの意見が多かった」と話した。大阪府は「長期金利も変動が激しく、北海道(10日に5年債を発行)がその後の応募者利回りが跳ね上がったこともあって、(引き受けが)ちょっと難しいという意見があった」という。
10月10日に200億円の20年債の発行を取りやめ、14日に300億円の10年債の発行を見送った東京都も、金融市場の混乱を理由にしている。「発行しようと思えばできない状況ではなかったが、機関投資家が買いづらい状況だったので無理しなかった」(公債課)と話した。
公募地方債は、個人投資家でも購入できるが、その多くを機関投資家が引き受けるのが一般的。これまでは引き受け手のなかに、外資系金融機関もあったが米国発の金融危機で、外資系の一部は去り、その分が国内金融機関に回ってきた。国内金融機関の負担が増えていることもあって、自治体側が機関投資家の顔色をうかがった格好だ。
東京都や大阪府、愛知県などの6団体から「10月債を発行する」との連絡を受けていた地方債協会は「どこも直前まで発行するつもりだったようで、こんなにバタバタと取りやめるようなことは、これまでになかった」と話している。
■11月上旬の地方交付税は「不幸中の幸い」?
予定していた資金が調達できなければ、歳出に支障をきたすことになる。地方債の資金使途は、学校や病院施設などの建設費や交通機関の整備などに充てられる。発行できないと、事業計画の取りやめや変更、工事を担当したゼネコンなどへの支払いが遅れたりする。償還を迎えた地方債の利払いに充てるものもあるので、財政計画そのものも見直さざるを得なくなる。
大阪府は見送った200億円の府債について、「今年度の予算計画もあるので、09年5月までには発行します」としている。
また、東京都も「20年債はタイミングをみて起債する。10年債は11月以降の発行分に増額して対応したい」と話した。
世界的な金融危機で長期金利の情勢もまた乱高下していて、発行のタイミングが難しいのは間違いない。しかし、先送りしたからといって低コストで発行できる「保証」はないし、かえって発行環境が悪化する可能性だってある。東京都は「資金繰りに支障はありません。市場環境がどうなるか、先のことはわかりません」とそっけない。
ところが、苦しい台所事情をしのぐ「手立て」があった。東京都を除けば、11月上旬は国から地方交付税の交付がある。さらに下旬には3月期決算の企業などから法人事業税などの中間納税があって、これが「不幸中の幸い」となりそう。
それもあってか、大阪府は「今回発行を見送っても、歳出への影響はありません」と話す。
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