2008年10月18日(土) 11時46分
「反応が見たかった」 ネットで“殺害予告”の24歳男(産経新聞)
歌手や声優の活動をしている女性(当時20)の殺害予告をネット上に書き込んだとして、脅迫の罪に問われた男性被告(24)の初公判が17日、東京地裁で開かれた。(徐暎喜)
法廷に入ってきたときから、被告には終始落ち着きがなかった。黄土色のスエットを着て、ふらふらと被告人席に着席した被告は、極度の緊張からか、まばたきの回数が異常に多く、視線が一点に定まっていない。被告人質問の際に沈黙が続くことが何度もあり、弁護人だけでなく、裁判官や検察官までもが、心配そうな表情で被告を見つめた。
検察側の冒頭陳述などによると、大分県出身の被告は大学中退後、新聞配達員などをしていたが、「環境を変えてみたい」と札幌に。「仕事につながるようなことを探してこい」という両親の意向も受けてのことだった。札幌市内のネットカフェで寝泊まりしていたという。
新たな出発を求めてやってきた札幌での職探しはなかなかうまくいかなかった。ストレスがたまっていた被告は今年8月6日、インターネット利用者が誰でも編集できるオンライン百科事典の被害女性のページに、「○○(被害女性の名前)ふざけんなよ 8月10日に殺します。場所はてめぇの家だ」などと書き込んだ。
それ以前にも、被害女性のホームページに掲載されていたメールアドレスに脅迫メールを何度か送っていたという。1月には知り合いを装い、「こっちはうらみがあります。殺してやるから待っててね」というメールも送っていた。
罪状認否で、被告は全面的に罪を認めた。
日時や場所を指定した“具体的”な殺害予告を書き込んだ被告に対し、検察側の追及は厳しかった。
検察官「いつ、どこで、どのように殺害するかということを書き込んでましたよね?」
被告「はい」
検察官「これからもインターネットを使うつもりなんですか?」
被告「必要があれば、使います」
検察官「それはどういうときですか?」
被告「仕事を探したり、買い物したり…」
検察官「それはネット以外でもできるんじゃないですか?」
被告「はい、できます…」
検察官「あなたにネットを使う資格、あるんですか」
絶句する被告。ネットカフェで生活し、どっぷりとネットの世界にはまっていたであろう被告にとって、“資格”を問われたのはショックだったようだ。沈黙の後、被告は「個人のサイトなどにアクセスしないようにする」などと必死に弁明しながら、ネット利用に理解を求めた。
裁判官「今回の事件を起こした理由は?」
被告「ほかの人の反応を見て楽しもうと…」
裁判官「そういう反応を見れば、『少しでも反応が得られてうれしい』ということなんですか?」
被告「はい。やっているときはそうでした」
裁判官「周囲の人の反応では、意味がないんですか?」
被告「人と接していかなくてはいけないとは思ってました」
裁判官「ネットでは、顔を明かしてやっているわけではないですよね? あなた、『てめえ、殺してやる』と書き込まれたら、どういう気持ちになるか分かるでしょ? (自分が)やったことの意味、分かっていますか?」
他人の反応が見たいがたために、ネットに殺人予告を書き込んだという安易な考えに、裁判官は心底あきれている様子だった。
裁判官「実家に戻って、自分の行く末をしっかりと見据えて、努力するところは努力し、我慢するところは我慢して、しっかり生きていってください」
被告は小さな声で「はい」とだけ答えた。
被告にはこの日、懲役1年、執行猶予3年の有罪判決が言い渡された。
裁判官の熱のこもった言葉は、被告の心に届いたのだろうか。反応の薄い被告に業を煮やしたように、裁判官は閉廷直前、被告に大きな声で語りかけた。
「更生されるのを、裁判所は待っています」
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