2008年10月14日(火) 23時00分
てんかん発作の交通事故初公判が15日/両親・てんかん協会が注目(カナロコ)
今年三月、横浜市鶴見区の歩道で市立中学校二年の伊藤拓也君(14)がトラックにはねられ亡くなった事故で、自動車運転過失致死罪などに問われた運転手男性(45)=川崎市=の初公判が十五日、横浜地裁で開かれる。男性はてんかんの患者で、発作が事故原因のため、刑事責任の有無を巡って曲折があり、起訴までに異例の約五カ月が経過した。てんかん患者による交通事故では司法判断が分かれており、裁判の行方が注目される。
事故から約七カ月。愛息を失った父・真さん(45)、母・みのりさん(44)の時間は止まっている。「拓也が死んでしまったことを今も理解できない」。運動会の真剣な表情、夏のキャンプでの無邪気な笑顔…。季節が移り変わるごとに、両親の脳裏には思い出の数々がよみがえる。
てんかん発作が原因の交通事故の公判では、被告の過去の事故歴や薬の服用歴などから「発作が予見できたかどうか」により、全国各地の裁判所で有罪、無罪の判断が分かれている。
今回の事件は、男性が過去にてんかんの発作で物損事故を起こした経験がある上、医師から処方された薬を服用していなかったことなどが調べで分かり、横浜地検が起訴に踏み切った。
日本てんかん協会(東京都)によると、てんかん患者は全国に百万人ほど。二〇〇二年に道交法が改正されて免許取得が可能となり、同協会の田所裕二事務局長は「免許を取ろうとする人は確実に増えている」と話す。同協会には毎月約百件の相談が寄せられるが、そのうち約二割が免許などに関するものという。
田所さんは「てんかん患者にとって薬を飲まないで運転することは“走る凶器”を手にすること」と、今回の事件では男性に責任があると強調する。裁判の行方を注目しているといい、「同じ惨劇を繰り返さないためにも、ホームページなどで経過を紹介したい」(田所さん)としている。
てんかん発作を巡る同様の事故は、有罪の場合でも執行猶予付きがほとんど。真さんは意見陳述で「息子を失った悲しみ、苦しみは、決して消えない。薬を飲んでいれば起こらなかった事故は、過失ではなく、故意に近い」と訴えるつもりだという。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081014-00000034-kana-l14