2008年10月12日(日) 08時01分
【票流底流 2008米大統領選】「黒人層」結束 オバマ氏支持(産経新聞)
■「夢が現実に近づきつつある」
米大統領選で優位に立っている民主党候補バラク・オバマ上院議員に熱い視線を送っているのが、黒人初の大統領誕生を望む黒人層だ。圧倒的多数がオバマ氏支持で結束している。なかでも公民権運動に参加した人たちは「夢が現実に近づきつつある」と期待を高めている。(アラバマ州モントゴメリー有元隆志)
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アラバマ州の州都モントゴメリーから西に車で約1時間のところにセルマという町がある。町にかかるエドモンド・ペタス橋はアーチ状で風光明媚(めいび)な場所だ。この橋が有名になったのは43年前の1965年3月。白人と同等の公民権を求める黒人のデモ隊が警官から殴打され、流血の惨事となる「血の日曜日」事件が起きた。当時11歳だったジョアン・ブランドさん(54)は姉に連れられてデモに参加した。
「参加者たちは警官隊に殴られ流血し、あちらこちらで倒れていた。催涙ガスで前は見えず、息も苦しくなった。本当に恐ろしい体験だった」
ブランドさんは橋のたもとにある投票権博物館で、当時の模様を伝えるとともに投票権の意義を訴える仕事を続けてきた。昨年3月には、この地を訪れたオバマ氏にも写真を見せながら説明した。オバマ氏はブランドさんの話にじっと耳を傾けていたという。
「オバマ氏の父親はケニアからの留学生で、ハワイで生まれ育つなど南部の黒人の歴史を背負っていない。でも、公民権運動の意義をよく知っていた」
負傷者が多数出たこのデモがきっかけとなって同じ年、すべての人に平等の選挙権を与える投票権法が成立した。
「まさか私が生きているときに黒人候補が大統領の座に近づく日がくるなんて想像もしなかった」
ブランドさんによると、これまで投票に行かなかった多くの黒人の友人たちが「今回は投票に行く」と話しているという。ABCテレビの世論調査によると、有権者登録した黒人は2004年よりも6ポイント上昇し、84%となった。黒人有権者9割がオバマ氏を支持し、72%はオバマ氏が勝利すると信じていると答えた。
ミシシッピ大のマービン・キング准教授は「黒人層はオバマ氏の当選が阻止されるのではとの疑念が残っているものの差別を覚えている年配層を中心にオバマ氏の戦いに非常に興奮している」と語る。
黒人の人口比率(2000年調査)は全米で約13%だが、南部ではミシシッピ州36%、ジョージア州29%、アラバマ州26%と高い。オバマ氏は民主党予備選において南部諸州で圧勝したことが、ヒラリー・クリントン上院議員との接戦を制する一因となった。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081012-00000063-san-int