2008年10月12日(日) 20時59分
<テロ指定解除>日本、交渉カード失う 米とのずれ浮き彫り(毎日新聞)
米国による北朝鮮のテロ支援国家指定解除は、日本の貴重な交渉カードを奪ったほか、対北朝鮮外交での日米間のずれを改めて示すことになった。政府内には「北朝鮮の最大の目的が達成されたことで拉致問題に応えるかもしれない」(外務省幹部)という楽観論もある。しかし、今のところ北朝鮮にその気配はなく、事態打開に向けた「次の一手」は見えない。【須藤孝】
「北朝鮮の非核化の検証を実質的にやれる枠組み作りが一番。それを取るために米国は指定解除を利用した。一つの方法だと思う」
麻生太郎首相は12日、視察先の浜松市で米国の対応に一定の理解を示した。そのうえで「拉致問題に関しては米国もきちんと対応している。(拉致問題を動かす)テコを失うなんてことは全くない」と述べた。
これに対し、訪米中の中川昭一財務・金融担当相は「同盟国である日本と事前に相談したうえでやったのかどうか」と指摘した。日本政府は核問題の進展に合わせて拉致問題を動かす戦略を追求してきた。その中で「指定解除カード」が日朝関係進展の大きなテコとなってきたことは否めない。それを失った今、中川氏ら対北朝鮮強硬派には米国への不信感が募っている。
首相は「米国の協力は得られる」「テコは他にもある」と強調したいとみられるが、政府が拉致問題の再調査の実行を呼びかけているのに対し、いまだに「北朝鮮はなしのつぶて」(外務省幹部)の状態。さらに、米国が日本に懸念が残る中で指定解除したことにより、北朝鮮が日本の足下を見透かして日朝交渉の設定自体に応じなくなる可能性もある。
「日米関係あるいは6カ国協議の中で、拉致問題もきちんと取り上げていく強い姿勢をこれからも持ちたい」
河村建夫官房長官が自ら言い聞かすように語ったことからも日本政府の苦悩がうかがえた。
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