米ロサンゼルスで1981年に起きた銃撃事件で、今年2月にサイパンで逮捕、拘置され、10日にロサンゼルスに移送された三浦和義元会社社長(61)=日本では無罪確定=が同日午後10時(日本時間11日午後2時)頃、収容先のロス市警本部内の留置場で首つり自殺した。政府関係者が明らかにした。ロス到着からわずか17時間後だった。三浦元社長は14日に罪状認否のためロス郡地裁に出廷する予定だった。発生から27年、主役の死で「ロス疑惑」の真相は闇に葬られることになった。
27年ぶりのロスで迎えた最初の夜に、事件の主人公は自ら命を絶った。
ロス市警関係者などによると、三浦元社長は現地時間10日早朝にサイパンからロスに移送され、市警本部の留置場独房に収容された。同午後9時45分頃、Tシャツで首をつっているのを発見され、南カリフォルニア大の病院に搬送されたが、午後10時頃、死亡が確認された。ロス到着からわずか17時間後に起きた出来事だった。
現在、遺体は病院に安置されており、郡検視局に回される見通し。遺書は見つかっていない。警備担当者の20〜30分ごとの見回りのすきを突いて自殺を図ったとみられる。
14日に起訴前の罪状認否のためロス郡地裁に出廷する予定だった。
元社長は10日昼前に在ロサンゼルス総領事館領事と15分ほど面会。自殺するようなそぶりはなく、領事の問いかけに「元気です」と答え、読書をしたがっていたという。
ロスの担当弁護士1人とも面会。ロスでの主任弁護人のマーク・ゲラゴス氏は「精神状態は良さそうと聞いた。法廷闘争に前向きだった」と語った。ロス移送前には「カリフォルニアに行く時がきた」と毅然(きぜん)とした様子で述べていた。その反面、日本での主任弁護人だった弘中惇一郎氏には「そうは言っても(気を)落としますよ」と語り、将来への不安も漏らしていた。
捜査とともにメディア報道が先行する「劇場型犯罪」の代表格だった「ロス疑惑」。日本では風化しつつあった事件は今年2月に急展開。三浦元社長が旅行先のサイパンで米当局に逮捕され、事件発生から27年後に再び火が付いた。
逮捕されると、日本での無罪確定を盾に「一事不再理」を主張し、米国での逮捕の不当性を訴え続ける強気の構えを見せた。一貫して無罪を訴え、ロスへの移送を拒否し続けたが、現地の地裁が人身保護請求を棄却。9月にロス郡地裁に求めた逮捕状取り消しも実現せず、一転して移送に同意した。
事件は米国であらためて訴追の手続きが進むという異例の展開をたどったが、容疑者の自殺で、訴追手続きは停止され、真相究明は極めて難しくなった。三浦元社長は最後まで「ロス疑惑」を払拭(ふっしょく)できなかった。
◆三浦 和義(みうら・かずよし)1947年7月27日、山梨県生まれ。輸入雑貨販売会社社長を務めていた81年、前妻の一美さんが銃撃され死亡。85年に一美さんを殴打した殺人未遂容疑で逮捕。88年、銃撃事件の殺人罪で起訴されるが、98年に無罪判決。03年に検察の上告が棄却され、無罪が確定した。殴打事件では実刑判決を受け、01年に出所した。07年4月、神奈川県平塚市のコンビニで万引きしたとして逮捕。08年2月、サイパンで殺人罪で逮捕。
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