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2008年10月03日(金) 20時35分

痴漢跳び蹴りでネット論争 相半ばする弟への同情と批判J-CASTニュース

 姉が痴漢されたと思い、弟が男を跳び蹴りして死なせたとされる事件が、ネット上で論議を呼んでいる。事件への見方で、弟への同情と批判が分かれているからだ。もし痴漢が事実だとすると、弟の行為はどこまでなら許されたのか。

■「私刑は認められない」「正当防衛」ネットで反する声

  「障害致死、日本では私刑は認められない。結局DQNだろ同情しない」
  「これっていわゆる正当防衛だろ?」

 2ちゃんねるでも、ここまで意見が相半ばする事件は珍しいかもしれない。

 大阪府豊中市内で2008年9月29日起きたこの事件は、「加害者」も「被害者」も刑事事件の疑いがかけられている。府警豊中署の調べによると、「加害者」の専門学校生の男(26)は同日深夜、20代で会社員の姉から電話があり、自宅前で姉の帰宅を待っていた。周辺の住宅街で最近、痴漢被害が相次いでいることもあったという。

 すると、姉の悲鳴が聞こえ、その方向へ走ると、姉に追われて自転車で逃げてくる「被害者」の男(40)を見つけた。「止まらんかい」と声をかけたが、そのまま逃げようとしたため、「止まれや」と言いながら、すれ違いざまに男の胸を跳び蹴りした。男は転倒して頭を打ち、間もなく搬送先の病院で死亡した。

 豊中署では、弟を現在も傷害致死の疑いで任意で調べており、書類送検する方針だ。一方、深夜で目撃者はいなかったものの、姉は自転車の男が追い抜きざまに右胸を触ったと証言しており、同署では、死亡した男を府迷惑防止条例違反の疑いで調べている。

 ネット上では、自転車の男が死んでおり、ほかに関係者が姉と弟しかいないことから、痴漢の事実関係も含め、論議になっている。2ちゃんでは、関連スレッドが多数立つ「祭り」状態だ。

 事実関係について、府警では、「捜査中」としている。全容解明はそれを待つしかないが、もし痴漢や2人の話が事実なら、弟の行為をどうみるべきなのか。

■「必要以上に強い力で殴ったりすれば過剰な行為」

 府警によると、弟は痴漢行為を見ておらず、男を見つけたときは逃亡中だった。白鴎大法科大学院長の土本武司教授は、この点を踏まえ、警察の送検は正しい可能性が強いと指摘する。

  「痴漢行為が終わって逃亡しているのにもかかわらず、それを追いかけて攻撃したとするなら違法行為になります。あだ討ち行為とみなされ、明治時代以降は、法的手続きを取らないといけないからです。弟の行為は、傷害致死罪にならざるを得ません」

 府警が弟を逮捕しなかったことについては、「この場合、正当防衛には当たりませんが、正当防衛的な要素があり、姉を守ろうとした態度は理に適うと警察が判断したのではないか」とみる。

 送検後に、検察が弟を起訴するかについては、土本教授は、「この場合、公判請求するのが、正常な処理の仕方だと思います」と話す。「公判では、裁判官は傷害致死の事実を認めざるを得ないでしょう。しかし、犯行の動機に同情すべき余地があるとして、情状面から執行猶予付きの有罪判決になる可能性があります」。ただ、自転車の男が死亡しているだけに、執行猶予を付けるのはかなりの決断がいるという。

 もし痴漢があったとすれば、どこまでなら弟の行為は許されたのか。

  「現行犯なら一般人でも逮捕できますから、社会通念上許される範囲内で、殴ったり倒したりするなどのある種の実力行使は許されます。しかし、それを越え、カーッとなって必要以上に強い力で殴ったりすれば過剰な行為で、逮捕としては適法だとは言えません」

 もっとも、相手が刃物などで反撃してきた場合、「警察官なら発砲できますし、危害の蓋然性が高まるので、一般人でもそれに準ずることが許されるでしょう」と言う。この場合、正当防衛が成立するというわけだ。


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