2008年09月30日(火) 14時00分
GPSシステムに脆弱性:偽のGPS信号で受信機をだます(WIRED VISION)
何百万台ものGPSベースのナビゲーション機器が出回っているいま、そろそろこんな疑問が出てもいい頃だろう——GPSのネットワーク自体が攻撃されたどうなるのだろうか。
バージニア工科大学とコーネル大学の研究者たちが、1年以上の時間をかけて、偽のGPS信号を送信して受信機をだませる機器を開発した。
「GPSは、電力網や水道システムと同じように技術基盤に組み込まれている」と、電気・コンピューター工学の教授でコーネル大学のGPS研究所の所長でもあるPaul Kintner氏が声明の中で述べている。「攻撃された場合、重大な影響を受けるだろう」
GPSは米国政府が構築したナビジェーション・システムで、特定の軌道で地球を1日2回周回する30以上の衛星で構成されている。これらの衛星は、地上や海上、空中に存在する受信機に信号を送信する。
受信機は、衛星から送信された信号を基に、地球上での正確な位置を三角法で測定することができる。だが衛星からの信号が間違っていたら——あるいは偽造されていたら——GPS機器は、受信している信号に基づいて、間違った場所を割り出すことになる。
研究者たちはまず、地球の大気の最高層に関する研究(電離層研究として知られる)に使用される、ブリーフケースほどの大きさのGPS受信機を使って、偽の信号を送信するようにプログラムした。
偽の受信機は、GPS衛星から信号を受けるはずのナビゲーション機器の近くに配置された。ほとんど間を置かずに、プログラムされた受信機は偽の信号を送信し、GPSベースのナビゲーション機器はこれを本物と誤認した。
バージニア工科大学の電気・コンピューター工学の助教授であるBrent Ledvina氏は、GPS受信機がなりすましに弱いことを示したこの実験に関して、こうした攻撃を防ぐ方法を案出するうえで役立つだろうと述べている。この実験の結果は、10月2日(米国時間)に発表される研究論文で詳述される。
「これは、近くにいる誰かが、周波数は同じだがより強力な電波を出してあなたの好きなラジオ局になりすまし、あなたのラジオをだまして正しいラジオ局を受信していると信じ込ませるようなものだ」とLedvina氏は語る。
GPS受信機のなりすましという発想は、これまでに連邦当局も考慮してきた。米国土安全保障省は、2003年12月の報告書で、なりすましの対抗策として7つの方法を詳述している。GPS信号の絶対強度と相対強度の監視、衛星の識別コードや受信した信号の数の監視、受信する各信号間の時間間隔のチェックなどだ。
だが、これらの方法では不十分で、プログラムされた偽の受信機から発せられる信号をうまく回避することはできないだろうと、研究者たちは述べている。
代わりに研究者たちは、ハードウェアとソフトウェア両方の変更を伴ういくつかの対抗策を提案している。「われわれは2つの特許を出願中で、その1つは信号に対する受信機の反応方法を変更できるソフトウェア・アルゴリズムだ」とLedvina氏は述べた。
もう一方の特許は、使用されるなりすましツールに関するものだとLedvina氏は語っている。「政府や企業が、改善された受信機を作ることに役立ちたい」と、同氏は述べた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080930-00000004-wvn-sci