2008年09月28日(日) 02時30分
<麻生首相>29日の所信表明で民主批判 総選挙強く意識(毎日新聞)
麻生太郎首相が29日に衆参両院本会議で行う所信表明演説の原案の全容が27日、明らかになった。民主党の国会戦術を「政局が第一で、国民生活は第二、第三」と批判するほか、同党に補正予算案への対応などをただす。首相が所信表明で野党に質問するのは極めて異例で、衆院解散・総選挙を強く意識した内容になっている。後期高齢者医療制度見直しは「必要な改革を検討する」と表明するにとどめる。
首相は冒頭で、「日本は強くなければならない」「日本を明るくしなければならない」「私は悲観しない」「私は逃げない」など、政権運営の基本姿勢を強調する。
そのうえで、国会運営に言及。ガソリン税の暫定税率維持を盛り込んだ租税特別措置法などをめぐる「ねじれ国会」下での与野党攻防を念頭に民主党批判を展開する。
政策的には「日本経済の立て直しが緊急課題」と位置づけ、当面は景気対策に最優先で取り組む考えを表明。総合経済対策を実施する根拠となる08年度補正予算案の早期成立の必要性に触れたうえで、民主党に前向きな対応を求めるとともに、反対する場合は根拠を代表質問で示すよう求める。
景気対策に続く施策としては「中期的には財政再建」「中長期的には改革による経済成長」を列挙。3段階での経済立て直しを提唱し、3年間で経済を回復させる方針を示す。11年度までに国と地方の基礎的財政収支を黒字化する政府の目標については「堅持すべく、努力する」と表明。道州制を目指すことや若者の自立を促すための支援新法の検討なども打ち出す。
外交面では、日米同盟の強化を主張する。そのうえで「日本と国民の安全のために日米同盟は重要」と指摘しながら、民主党の小沢一郎代表の持論である「国連中心主義」を批判。日米同盟と国連のどちらを優先するのか民主党に回答を迫る。
また、海上自衛隊によるインド洋での給油活動は継続の必要性を強調。「テロとの闘いから日本が撤退してもいいのか」と民主党の見解を求める。
演説内容は28日の最終調整を経て、29日の臨時閣議で決定する。
◇麻生首相の所信表明演説骨子◇
・民主党の国会戦術を批判
・民主党に08年度補正予算案への賛否を質問
・11年度までの基礎的財政収支の黒字化堅持に努力
・後期高齢者医療制度で必要な改革を検討
・民主党に消費者庁創設への対応を質問
◇まるで民主へ代表質問
麻生太郎首相の29日の所信表明演説は、民主党への質問と批判を随所に盛り込んだ異例の内容となる。衆院解散・総選挙をにらんで民主党のイメージダウンを狙うが、政策課題への言及は具体性に欠けている。「民主党の首相」への自民党総裁の代表質問という錯覚さえ与える演説になりそうだ。
具体論の冒頭では、言及する課題を当面大事な政策にあえて絞ったうえで、民主党との議論に重点を置く演説方針を示す。その結果、歴代首相並みの6000字弱、約20分間の演説は、3分の1程度が民主党への質問と批判にさかれる見通しだ。
福田康夫前首相は昨年10月の所信表明演説で民主党の文字は1回も出さず、「野党と重要な政策課題について、誠意をもって話し合う」と語っただけ。これに対し、麻生首相は「政治とは国民の生活を守るためにある」という民主党の標語を引用しながら「信条を裏切ってしまっていいのか」と挑発する文言も盛り込む方向で、異例さは際立つ。
民主党への質問は(1)補正予算案への対応(2)地方道路財源を補てんする法案への賛否(3)消費者庁創設への賛否(4)日米同盟と国連の優劣(5)海上自衛隊によるインド洋での給油活動への見解−−など幅広い分野に及びそうだ。
どの政策課題も、民主党が政権を取った場合、現実的な対応を迫られる可能性を含んだものが多い。首相としては「民主党のアキレスけん」を突く考えがあるようだ。
ただ、裏を返せば、民主党の協力がなければ政策の遂行が困難という政府・与党の苦しい立場を露呈することにもなる。また、闘争心をむき出しにした所信表明に批判が上がる可能性もある。そうした危険を冒してまであえて挑戦的な演説をしなければならないほど、政府・与党は追い詰められているとも言えそうだ。【高塚保】
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