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2008年09月24日(水) 17時26分

【元公安庁長官再尋問(7)】「社長に賭けてみよう」と言ったのは…産経新聞

 《約15分間の休廷をはさみ、再び緒方重威被告への尋問が始まる。休廷中、緒方被告は法廷の外へ、満井忠男被告は被告側の席に座ったまま、担当の女性弁護士と小さな声で話し込んだ》


 緒方被告の弁護人「6月12日に、新聞に本件に関するスクープ記事が載りましたね。被告人はこのスクープ記事によって、(航空ベンチャー会社社長の)Aさんからの資金調達が困難になると思いましたか」

 緒方被告「はい」

 緒方被告の弁護人「Aさんに関しては、もうまったくだめだと思いましたか」

 緒方被告「まったく、ではありませんが、困難だろうとは思いました」

 緒方被告の弁護人「河江(浩司)さんに電話をして、Aさんの状況を聞いてみましたか」


 《緒方被告は記憶をたどるようにしばらく考え込んだ》


 緒方被告「…。尋ねてみた記憶が強いです。ただ、直接聞いたか、満井さんを通して聞いたのか、記憶がはっきりとはしないので」

 緒方被告の弁護人「いずれにしても、まあ、満井さんを通したかもしれないけれども、河江さんには聞いたのですね。河江さんはどんなことを言っていましたか」

 緒方被告「河江さんからはお昼まで何の返事もなかったのです。その後、返事があって」

 緒方被告の弁護人「それで、どんな返事だったのですか」

 緒方被告「お昼過ぎまでと言ったけれども、『お金の準備はAさんの方はできていない』という返事でした。私の方は時間を区切っているので、お金の準備ができないのであれば、登記を元に戻すよと河江さんに言いました。河江さんの方では、私のその言葉をAさんに伝えましたと。河江は『でも、Aさんはまだがんばると言ってますよ』と」

 緒方被告の弁護人「Aさんががんばるというのは、被告人らが登記を元に戻すといっても、ということですか」

 緒方被告「はい。この件は大義を感じてやっているので最後までがんばると。Aさんはそのようなことを言っているということでした」

 緒方被告の弁護人「その後、河江さんからは何か連絡はありましたか」

 緒方被告「その後、土屋先生の事務所に、満井さん、私、河江さん、許(宗萬・総連責任副議長)さんらと集まりました」

 緒方被告の弁護人「この集まりで、あなたは総連の登記書類をどうしましたか」

 緒方被告「司法書士から登記を元に戻すための書類がなかなかファクスで送られてこないので、イライラしていました。午後2時か3時になって『錯誤』を理由として登記を元に戻す書類が送られてきました。ただし、これはファクスで送られてきたので、紙の端に送信元とかの耳が付いてるんですね。そこで事務員に耳を切り取ってもらい、最初からちゃんと作った書類のようになるようにして、土屋事務所まで事務員に届けさせました」

 緒方被告の弁護人「結局、土屋事務所での打ち合わせでは、Aさんからの金は来なかったと報告したのですか」

 緒方被告「はい。河江からも同様の報告がありました」

 緒方被告の弁護人「被告人の方からは、登記を元に戻そうと提案したのですか」

 緒方被告「Aさんの資金調達がまったくだめとは思わなかったですが、ほぼだめだろうなという感触がありました。そこで、登記を元に戻すには印鑑が必要なので、それを土屋事務所に持って行きました。土屋先生に対しては『登記はいつでも元に戻せる状態になっています』と言いました」

 緒方被告の弁護人「Aさんは『最後までがんばる』と言っていたようですが、それでも元に戻すと?」

 緒方被告「それでも、というか、土屋先生の意見を聞いて判断したいと思いました。そうしましたら、土屋先生が『書類は私の方で預かっておきます』と。『Aさんが、そちらはそちらでも、こちらは大義があるからがんばるとおっしゃっているのなら、18日の判決前まではAさんに賭けてみようじゃないか』と。それで、登記を元に戻す書類はすべて土屋先生にお預けしました。その際、土屋先生から預かり証ももらっております」

 緒方被告の弁護人「Aさんがこういっているから、もうちょっと待ってみようとか、被告人の方からお願いしたことはありませんか」

 緒方被告「ありません」


 《緒方被告は、Aさんの出資に自らが期待をしているような言動を土屋弁護士側にしていないことを繰り返し強調した。緒方被告の弁護人は、ここで場面を翌日の記者会見に移す》


 緒方被告の弁護人「6月13日には本件に関して記者会見を開きましたね。その記者会見ではありのままに話しましたか」

 緒方被告「はい」

 緒方被告の弁護人「その後、満井さん、河江さんと食事をとりましたね」

 緒方被告「はい。記者会見で記者からどのような質問が出たか、どのようなことを私が話したか、説明しておいた方がいいと思いまして。記者会見の内容をかいつまんで説明しました」

 緒方被告の弁護人「Aさんの資金調達に具体的な進展はありましたか」

 緒方被告「いいえ、ありません」

 緒方被告の弁護人「このときの食事も含めて、満井さんや河江さんと事実に反して話を合わせたことはありませんか」

 緒方被告「ありません」

 緒方被告の弁護人「総連の建物について、競売になってもどうせ買い手は付かないだろうというような話をしたことはありますか」

 緒方被告「あります。記者会見では記者から投資家の方はどうなっているんだという質問がありましたので。今、まさしく交渉の途中なんだと。だから、報道で騒がれるのはとても迷惑なんだということを説明しました。もうAさんにがんばってもらうしかないじゃないかと。金がなければ会館の登記は元に戻すわけです。そうすると、まあ裁判の結果次第ではありますが、RCC(整理回収機構)が差し押さえることになるでしょう。するとRCCは競売にかけて、私たちのこれまでの努力がまったくの水の泡になるわけです。そんな話の中で、競売の話になり、土屋先生は『競売になればだいぶ安くなって20億円くらいかな』などと言っていました」

    =(8)に続く

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