2008年09月24日(水) 17時01分
【元公安庁長官再尋問(6)】資金調達の雲行き怪しく…緒方被告が「登記戻すよう提案」(産経新聞)
《航空ベンチャー会社社長のAさんに打診していた、総連中央本部の買い取り資金調達の雲行きが怪しくなってきた。元公安調査庁長官、緒方重威被告の弁護人は、中央本部の登記をめぐる経緯について質問していく》
《公判が始まってから2時間以上が経過するが、緒方被告は疲れをみせることもなく流ちょうな説明を続ける。一方、総連から渡されていた緒方被告の報酬をネコババしていたと証言された満井忠男被告も、動揺を見せることなく、証言の行方を見守る》
緒方被告の弁護人「6月11日ごろの夜、土屋(公献弁護士)先生の事務所に、許(宗萬・総連責任副議長)さん、趙(忠治・総連常任委員)さん、河江(浩司被告)、満井さんらと集まり、資金調達ができなかった場合の善後策を検討しましたか」
緒方被告「はい」
緒方被告の弁護人「資金調達の状況については、被告人が説明したのですか」
緒方被告「私は、『河江さんは11日に(Aさんが資金を)持ってくると言っていたが、Aさんから金が来ていない』と説明しました。詳しくは、河江さんが話しました」
緒方被告の弁護人「河江さんはどのような説明をしましたか」
緒方被告「『Aさんは今、金を持ってくるよう動き回っています』と話していました」
緒方被告の弁護人「資金調達できなかった場合、登記はどうするという話になりましたか」
緒方被告「このままお金が調達できなかったらどうしようかということは、土屋先生とも話しました」
《質問と答えがかみ合わない。弁護人は再度同じ質問を繰り返した》
緒方被告の弁護人「どうするという話ですか」
緒方被告「私は『その場合は土屋先生、登記を元に戻して原状回復しないと』と言いました。土屋先生は、『どういう方法かね』と尋ねられた。私はあまりそのあたりの知識がなかったのですが、『登記を戻すことで総連に取得税がかかると大変ですね』と話したところ、満井さんが『錯誤無効でやれば、(手数料は)1000円で済む』と言っていました」
《錯誤無効とは、契約内容の重要な部分の認識について錯誤があったとして、契約の無効を主張するという方法だ》
緒方被告の弁護人「その提案に対する、総連側の反応はどのようなものでしたか」
緒方被告「錯誤無効(という方法)について、土屋先生は心配されている点がありました。『錯誤無効というと架空取引をしているんじゃないかと思われるのではないか』という心配をされていたようです。『手数料が1000円というのは魅力的だが』とおっしゃっていました。ただ、『とにかく資金調達ができなければ、(登記を)戻してもらわなければ総連としても困る』とも話していました」
《続いて質問しようとする弁護人の言葉をさえぎりながら、当時のやりとりについて細かく証言する緒方被告。残りの質問時間を気にしてか、一聞くと十答える状態の緒方被告に、弁護人はやや渋い顔だ》
緒方被告の弁護人「架空取引(だと受け取られることへの心配)というのは、RCC(整理回収機構)との関係でですか」
緒方被告「はい」
緒方被告の弁護人「錯誤無効というのは、このとき初めて出た話ですか」
緒方被告「そうですね」
緒方被告の弁護人「満井さん、河江さんとの間で出たのもこれが初めてですか」
緒方被告「はい」
緒方被告の弁護人「登記を戻すことについて、土屋先生から何か提案はありましたか」
緒方被告「いいえ。『総連としても、戻してもらわないと困る』と言っていました。私としても、(登記を戻すために)それなりの準備をしておかないといけないと思ったので、『司法書士の先生に聞いて、書類を準備してもらおう』と土屋先生に言いました」
緒方被告の弁護人「被告人はその場で、河江さんに何か指示を出しましたか」
緒方被告「司法書士の先生のところで権利書をもらってくるのと、登記書類を私の事務所にファクスしてくれるよう司法書士の先生に頼んでもらうよう言いました。(登記を戻す方法について)結論は出ていませんでしたが、とりあえず錯誤無効の形の書類でいいから、司法書士の先生に作ってもらおうと思いました」
緒方被告の弁護人「Aさんに対しては何か指示しましたか」
緒方被告「河江さんによると『Aさんは資金調達のために一生懸命やっている』という話だったが、私は『時期を切らないといけない』と言いました。『翌日の昼までに(資金調達が)できなければ、登記を戻すことになる。昼までは待つとAさんに厳しく言ってほしい』と、河江さんに言いました」
緒方被告の弁護人「それは、許さんや趙さんもいる前でですか」
緒方被告「はい」
緒方被告の弁護人「昼まで待つことについて、総連側からは何か意見が出ましたか」
緒方被告「特にありませんでしたが、河江さんは結局、Aさんに『(翌日の)3時まで待つ』と伝えた ようです」
《ここで林正彦裁判長が休憩を取るか尋ねると、弁護人は『あと3問だけ…』と粘り、質問を続けた》
緒方被告の弁護人「土屋法律事務所を出てから、被告人はどうしましたか」
緒方被告「ホテルニューオータニに満井さんと行きました」
緒方被告の弁護人「それはどうしてですか」
緒方被告「満井さんから『実は商社社長に、総連買い取り資金の調達を頼んでいる』と聞きました。『その返事をこれから聞きに行くが、先生も一緒に行ってもらえませんか』と言われ、『私も良い返事が聞きたいので行く』と、ついて行くことにしました」
《商社社長とは東京・六本木の通称「TSKビル」の地上げを一緒に手がけた人物。総連中央本部の売買についても購入資金を出すよう要請したが、すでに断られていた》
緒方被告の弁護人「商社社長とは、どんな話をしましたか」
緒方被告「会うなり、私は単刀直入に聞いたと思います。『お金を調達できますか』と。すると、『満井さんにも言ってあるが、いくら先生の頼みでも、総連の買い取り資金というのであれば私の方では無理です』と、これはもう、きっぱりと言われました」
《緒方被告は、『きっぱり』の部分に力を入れた。最後まで資金調達のために努力していたことを強調したいようだ。終始熱弁をふるっていた緒方被告は、この質問を最後に林裁判長が休憩を告げると、ハンカチでぐいぐいと口元をぬぐいながら傍聴席に会釈をした》
=(7)に続く
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