記事登録
2008年09月20日(土) 10時00分

【トレンド】検証!「iPhone 3G」は2.1アップデートで使いやすくなったのか?nikkei TRENDYnet

 アップルは2008年9月12日、「iPhone 3G」をバージョン2.1へアップデートするソフトウエアを公開した。今回のアップデートはiPhone 3G発売以来初めてiPhone OSの小数点一ケタが変化する重要なアップデートで、複数の機能追加や仕様変更が行われている。この記事では短時間でのテストではあるが、アップデート前とアップデート後のバージョンアップ内容において、iPhoneの実用性がどの程度改善されたかについて検証する。

【詳細画像または表】

iPhone 3G発売以来の大型アップデートも機能改善が中心

 今回のアップデートによりiPhone OSは2.0.2から2.1へとバージョンアップしたのだが、アップデート内容の多くは現在のiPhoneが抱える不具合の修正やパフォーマンス向上が中心だ。目立つ新機能の追加は「Genius」のサポートのみとなっている。

 iPhone発表時には、目玉機能の一つである追加アプリ向けプッシュサービス「Apple Push Notification Service」の実装を9月と予告していただけに、肩すかしを食らった人もいるだろう。だが、iPohne 3Gには各国で通信品質やバッテリーの持ち、日本では日本語入力の使いづらさも含めた不満が噴出していただけに、iPhone 3Gユーザーにとっては、大がかりな新機能の実装よりも待ち望まれていたアップデートといえる。

 アップデート作業はPCまたはMacのiTunes上で行う。Geniusの利用には先日公開されたiTunes8が必要なので、できれば先にiTunesのアップデートを行っておこう。アップデートは同期画面から「更新ファイルを確認」を押す事で開始。筆者の環境では約15分ほどかかった。これ以上かかる可能性もあるので、なるべく時間の余裕があるときに行おう。

バッテリーの持ちと電波感度が改善、実用的な品質に

 それでは、iPhoneアップデート後の変化に付いて見ていこう。

 iPhoneの不満点としてかならず上位に上がるバッテリーの持ちだが、何も操作していない待ち受け状態において、バッテリー消費が大幅に改善されている印象を受けた。iPhoneユーザーなら、フル充電後に3時間放置したあとのバッテリー表示を見ればすぐに気づくだろう。電波状態の良好な場所で静止状態にしておけば3日は持ちそうだ。操作時のバッテリー消費は特に変化を感じられなかったが、こちらは元からスペック値に近い動作時間を達成しており、特に問題とする必要はないだろう。

 簡易ながら、実際の利用に近い環境で待ち受け時間のテストを行った。iPhoneを東京周辺で交通機関の利用も含めて持ち歩きつつ、メールやフルブラウザなど様々な操作や通話(iPod再生しながらの操作も含む)を約2時間、画面表示を行わない状態でのiPod再生(AAC形式256kbpsの再生)を約2時間行ったうえで、バッテリー残量が20%になるまでの時間を計測した。 本体設定は無線LANとBluetooth、MobileMeのプッシュサービスをON、フェッチ受信感覚は1時間に設定した。バッテリーの持ちは電波状況などにも大きく左右されのだが、大まかな傾向は読み取れるだろう。

 結果、バージョンアップ前は約14時間ほど、バージョンアップ後では約25時間ほどでバッテリー残量が20%となる警告が表示された。確かに「バッテリー寿命の劇的な向上」というだけの変化はあるようだ。

 「発売から二か月間目にしてようやく製品として成り立つレベルの待ち受け時間に修正された」というのが正直な感想だが、バッテリーを気にせず一日ぐらい使えるようになった点は歓迎したい。

アップデートでiPhoneは本当につながりやすくなった?

 ネット上では一部で電波受信感度が向上したとも言われる「3G 信号強度表示の正確性の向上」だが、確かに筆者の自宅でもアップデート前は5本中1潤オ3本でふらついていたアンテナ表示が、常に5本中5本表示されるようになった。日常の生活圏でアップデート前や同じソフトバンクの東芝製端末「811T」と比較したところ、アップデート前のアンテナ表示が1潤オ5本程度だった場所での多くで5本表示となり、811Tで3本中3本表示がなされるエリアとほぼ一致した。エリア端でアンテナ表示の減りを比較しても、iPhoneと811Tのアンテナ表示はほぼ同じ割合で減少していった。アップデート後のアンテナ表示が、一般的な携帯電話の表示基準に近づいたというのが実情のようだ。

 一方、同じソフトバンクのシャープや東芝、ノキア端末と比べ、エリア端で早々に圏外と表示されてしまう点だが、アップデート後は圏外と表示されづらくなったようだ。実際にはつながらないことが多いものの、アンテナ表示があれば接続を試せるだけにこの改善はうれしい。とはいえ、エリア端での通信品質を東芝製811Tと比べると、アップデート前と同様iPhoneの方が明らかにつながりづらい。エリア端でつながる機会は多少増えたものの、本質的な通信性能は特に改善されていないという印象だ。

 ただ、エリアに関してはソフトバンク全体の問題として、ドコモやauと比べると屋内でつながりづらいという不満はある。iPhoneを快適に利用するための改善としては、iPhone本体よりもソフトバンクによるエリアの改善を期待したい。

 一度iPhoneを圏外に持ち出したあと圏内に戻っても、アンテナ表示が圏外のまま数分間戻らず通信を行えないという現象については、アップデートにより改善されたようだ。アップデート後は圏外から圏内表示へ戻るまで数分かかる現象には遭遇しておらず、一般的な携帯電話よりは遅いものの、数十秒で圏内表示に戻る。また、圏外表示のままでも明らかに圏内の場所で通信を試せば、圏外表示から圏内表示に戻り通信が開始されやすくなったようにも感じられた。

文字入力のストレスは大幅解消!連文節変換も可能に

 iPhoneの文字入力機能は快適さが大きくアピールされがちだが、アップデート前は連文節変換にも対応しておらず、フルブラウザの利用中などは一回のキー入力ごとに3秒程度の処理待ちが起きるなど、「文字入力は利用したくない」というのが実感だった。

 だが、バージョンアップ後はキー入力に対する反応が良くなり、フルブラウザ利用中でも処理時間は長くて1秒程度に収まっている。連文節変換に対応し、複数の文節を入力しても変換できるようになった。これらの改善により、ようやくiPhoneでも日本語が普通に入力できるようになったといっていいだろう。コピー&ペーストや単語登録には対応していないが、将来的な追加を期待したい。

新機能Geniusへの対応と使い勝手の向上したiPod機能

 iPod機能周りでは、新iPodとiTunes8と同様にGeniusへの対応が行われた。マイリストの選択画面または曲の再生画面から、選択した曲に合わせたプレイリストを自動生成できる。なお、Genius利用時に通信は行っていないようだ。リスト生成用のデータベースは iTunes8から転送されているものと思われる。

 その他、スピーカーの音量が大きくなったほか、イヤホンマイクのスイッチ機能にトリプルクリックでの曲戻しを追加。プレイリストでは曲名に加えてアルバム名とアーティスト名の表示、途中まで再生したPodcastの再生残り時間の表示を行うといった機能改善がみられた。

バックアップとアプリインストールが高速化

 iTunesにはiPhoneのバックアップ機能が備えられており、iPhoneをPCまたはMacに接続すると、毎回iTunesが自動的にiPhoneのバックアップを行う。しかし、このバックアップは毎回数分の時間がかかるため、頻繁にiPhoneとiTunesを接続するユーザーには面倒な機能となっていた。だが、今回のアップデートによりこの点は解消され、短い時は数秒で完了するようになった。ようやくiPodと同様の便利さが実現できるようなったといえよう。

 アプリケーションのインストールについても高速化されている。アップデート前後でmixiの再インストールを行ったところ、再インストール時間は半分となった。このほかにも「Y! 地図」や「食べログ」をインストールしたが、処理はおおむね10秒から30秒の間で完了した。有料・無料問わず様々な新着アプリケーションを楽しみたい人にとってはうれしい改善点だ。

 カメラ機能のGPS位置情報タグに関する不具合も修正されている。アップデート前は写真に埋め込まれる経度情報の東経が西経として記録されており、写真のGPSタグを利用したサービスを正常に利用できなかった。アップデート後は正確な場所を記録するようになり、写真のGPSタグを使ったサービスを正常に利用できる。なお、カメラの撮影機能は強化されておらず、露出などは設定できないままだ。

アップデートでiPhoneは使えるケータイになったのか?

 iPhone OS 2.1へのアップデートは当初期待された機能追加が無かったものの、iPhone 3Gが抱えていた通信周りやバッテリー、日本語入力などの重大な不具合は大方改善された。携帯電話として最低限の品質を満たすことで、ようやく本来のスタートラインに立てたといえよう。

 とはいえ、フルブラウザが強制終了しやすく、端末自体がフリーズしやすい点はそれほど変わっていない。auの絵文字入りメールを受信すると本文も文字化けするという、iPhone発売前のiPod touchにあった不具合が再発している点も気になる。ソフトバンクから、他キャリアの携帯電話とメールを快適にやりとりできる「softbank.ne.jp」のメールアドレスが提供されない点も相変わらずだ。

 日本の携帯ユーザーにとっては、複雑な操作を必要としないスマートフォンとしてさらに魅力的になったといえよう。だが、一般的な携帯電話から買い換えるには、携帯電話同士のメールを快適に利用できないなどの点からお勧めできない。もしiPhoneを購入するなら、2台目の携帯電話として持つのが賢明だ。今後のさらなる不具合の修正と、日本の携帯電話との親和性を考えた機能追加に期待したい。

著 者

島 徹(しま とおる)

 携帯電話の使いづらさにへきえきし、ケータイ情報サイト「sureare.com」を運営したり、2ch携帯・PHS板に張り付いていたところ、某コンテンツプロバイダー社長に捕まり神保町界隈へ放り込まれる。現在、日経エンタテインメント!、週刊アスキーの連載など、ケータイ・モバイル関連のライターとして活動中。



【関連記事】
  無料のうちに必ずゲットしよう! iPhoneにファイルを保存できる「Air Sharing」
  iPhoneで動画を楽しめる「Yahoo!動画」
  iPhoneで“じゃじゃ馬”アウディを乗りこなせ!「Audi A4 Driving Challenge」
  iPhoneでキーワードを基にしたスライドショーを楽しめる「Brain Lantern」
  iPhoneで自在に描けるお絵かきアプリの決定版!「iDoodle2 lite」

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080920-00000003-nkbp_tren-mobi