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2008年09月14日(日) 15時27分

副都心線開業3カ月 トラブル減って乗客は? 10月が“正念場”産経新聞

 開業3日目でダイヤが大きく乱れ、苦情が殺到した東京メトロ副都心線(和光市−渋谷)が14日で3カ月を迎えた。同社は駅設備の改良、乗務員や駅員に対する教育の徹底、連絡態勢の見直しを実施し、「今や全9路線の中で最も正確な路線」(広報部)に回復したとするが、果たして利用者の不安感は払拭できたのか。4月購入の定期買い替え期となる10月の動向に注目が集まっている。

 ■混乱の幕開け…開業2週間で見直し

 列車の停止位置がホームドアに合わない、車両の種別表示が変わらない−。遅延につながるトラブルが頻発する中、指令所のミスでポイントが切り替わらず、各停が東新宿駅を通過するオマケまで…。

 開業後初めて平日のラッシュ時を迎えた6月16日、ダイヤは終日大きく乱れたままだった。とくに東京メトロ有楽町線のほか東武東上線、西武池袋線が連絡する小竹向原駅は混乱した。

 4番線まである小竹向原駅は池袋駅をしのぐ副都心線の拠点。ホームを移ったり改札外に出ることなく、別路線に乗り換えられる半面、4路線が入り組んだ複雑なダイヤが組まれ、一度乱れると乗りたい列車がいつ来るのか予測できない欠点があった。

 開業まもなくは駅員が不慣れでホームの電光掲示板もあてにならない。そもそも2列しか表示されないので下の列に運行状況が流れてしまうと次列車の種別・行き先しか分からなくなってしまう。利用者はイライラを募らせた。

 東京メトロの瀬ノ上清二運転課長は「期待が大きかっただけに大変な迷惑を掛けてしまった。小竹向原駅は駅としての機能が増え、開業前に準備した対応では不十分だった」と振り返る。開業2週間ほどで駅の設備や人員配置を見直さざるを得なくなった。

 ■運行モニター携帯、電光掲示板を3列に<

 まず着手したのが小竹向原駅設備の改良。ホームを挟み1、2番線のどちらからも有楽町線と副都心線が発車するにもかかわらず、「1番線が有楽町線、2番線が副都心線と誤解を与えた」というホームの行き先表示を両線併記とした。さらに座るために列車を1本見送る利用者に配慮し、電光掲示板を2列から3列にして先の列車の種別・行き先が分かるようにした。

 輸送障害が発生した場合の連絡態勢も強化した。

 小竹向原駅に情報連絡員を新たに置き、ポイントを操作する係員の詰め所に総合指令所との直通インターホンを設置。さらに全線の運行状況をモニタリングできるパソコン端末を増備し、駅員が構内放送をするホームの詰め所に携帯できるようにした。

 緊急連絡がより確実になったうえ、駅に最も近づいている列車をモニターで確認することで、迅速に正確な情報を伝えられるようになった。

 ■運行見直し、車両操作も徹底指導

 輸送障害が復旧するまでの運行態勢も見直した。

 副都心線、有楽町線、東武東上線、西武池袋線のいずれかでダイヤが大幅に乱れた場合、有楽町線の復旧を優先し、副都心線は小竹向原−渋谷間を折り返していた。しかし「案内が不十分で周知できなかった。小竹向原に到着してもなかなか乗客が降りてくれず、ますますダイヤが乱れることになった」(東京メトロ運転課)。

 そこで、池袋−渋谷間の折り返し運転に変更。東武東上線と西武池袋線は池袋駅で乗り換える振り替え輸送とした。当初は「(長い距離の)輸送確保を考えてしまった」(同)が、代替交通機関の多い池袋駅であれば乗客もスムーズに降りてくれるという。

 また、開業時にダイヤが大幅に乱れた発端は車両トラブルだった。

 可動式ホーム柵の位置よりも手前で停止してしまうトラブルが頻発し、位置の修正に時間を費やした。原因は自動列車運転装置(ATO)のプログラムミス。満員状態になると想定外のエラーが出たとし、昨年8月からの「試運転では気づけなかった」(同)とするが、準備不足の面は否めない。

 さらに副都心線がワンマン区間であることや、急行が走ることも混乱に拍車をかけた。西武の車両は小竹向原駅で東京メトロの運転士に交代するが、不慣れなために「急行」「各停」といった種別表示や保安装置の切り替えに時間がかかってしまった。

 東京メトロは運転士経験のある上役が切り替えに立ち会うことで再発を防いだが、社内では「運転士の意見をもっと取り入れて車両を設計すべきだった」との意見も出たという。乗用車でいえば、ハザードランプやクラクションの位置が違う車種を乗り継ぐようなものだからだ。

 ■信頼は回復したのか…定期の動向が今後を占う

 トラブル続きだった副都心線だが、開業に伴い新たに開通した池袋−渋谷間の乗車人員は、6月が1日平均で17万8000人、7月が同19万1000人と予測した15万人と比べ順調な滑り出しを見せている。開業1カ月で約2500件に達した苦情も今では「他の路線と同じ程度」(広報部)まで減少したという。

 ただ、他路線では乗車人員の56・3%に上る定期利用が副都心線では約3割にとどまっている。10月の定期買い替え時期を控え「利用者は徐々に増えていく」と期待するが、「開業当初のトラブルで時間の正確さが求められる通勤・通学での利用を避けているからではないか」(鉄道関係者)との見方もある。

 一方、競合するJR山手線池袋−渋谷間は1日平均9万人減だった予想に対し、6〜7月の推計値で同6万〜7万人減。このうち定期は約1万5000人程度で、ラッシュ時の混雑は「ものすごく緩和されたとは思っていない」(清野智JR東日本社長)状態だ。

 混雑緩和は歓迎すべきことでも収入減となれば話は別。JR東は山手線と並行する貨物線などを利用し、埼京線の延伸や湘南新宿ラインの増発などを行ってきたが、清野社長は9月2日の会見で副都心線への新たな対抗策を聞かれ、「地道だが、安全確実で安定的な輸送を心掛けること」を挙げた。

 副都心線はトラブル多発のイメージを払拭し、利用者の信頼は勝ち得たのか。定期買い替えの動向が試金石といえそうだ。

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