自治体の土地区画整理事業をめぐり、計画決定段階で、反対住民らが取り消しを求め行政訴訟を起こせるかどうかが争われた裁判の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・島田仁郎長官)は10日、42年ぶりに判例を変更、「計画決定は訴訟で争える行政処分に当たり、提訴は認められる」とする判断を示した。
島田裁判長は、不適法を理由に、被告の浜松市勝訴とした1、2審判決を破棄。事業計画の違法性の有無について実質審理するよう静岡地裁に差し戻した。
これまでは、土地を再配置する「仮換地」指定後などに初めて訴訟の対象になるとされていたが、より早い計画決定の時点から裁判で争えることになり、行政訴訟の門戸が拡大する。町づくり事業に対する各地の住民運動に影響を与えそうだ。
15人の裁判官全員が判例の変更を支持した。
問題になったのは、浜松市が進める遠州鉄道「上島駅」の高架化に伴う周辺地域整備事業。市が2003年11月、対象地区や期間、設計概要などを含む事業計画を決定した。
判決は、計画決定されると、宅地所有者らは建築制限が課されるほか、特段の事情がない限り事業が進むため換地処分を受ける地位に立たされると指摘。
さらに「事業が進んだ段階で提訴し、仮に違法性が認められても、混乱を引き起こすとして、行政事件訴訟法に基づく事情判決によって請求が退けられる可能性も高い」と言及。「計画決定は法的地位に変動をもたらし、実効的な権利救済を図る観点からも提訴を認めるのが合理的」と結論づけた。