2008年09月09日(火) 16時17分
楽天失速の教訓〜指導に必要なのはミーティングと反復練習(ツカサネット新聞)
東北楽天ゴールデンイーグルスが失速した。ペナントレース前半は先発投手が順調に勝ち星を重ねてAクラスを争い、セ・パ交流戦は球団創設史上初めて5割を突破した。それが、7月に入ってからはまるで別のチームのように負けだし、現在は借金ふた桁の最下位に沈んでいる。
もともと野村克也監督は、6月までの善戦も「幸運」としていたので、今日の結果も見えていたのかも知れないが、昨年は後半の追い上げで4位に食い込んだだけに、それと対照的な今年の失速が残念でならない。
一体、どうしてこんなことになってしまったのか。戦力不足は確かに否めない。抑え投手もいない。ホームランも少ない。レギュラーキャッチャーもいない。しかし、それは最初からわかっていたことで、その中でどう戦ってゆくかが監督の采配にかかっている。
野村監督は、「うちは併殺打も多いしな(リーグトップの91=8月29日現在)。野球が未熟なんだよ。選手が野球を知らなさすぎる」(「日刊ゲンダイ」8月29日付)という。試合後の談話でも、バッテリーの配球ミスについても何度ボヤいたかわからない。それらはおそらく、プレーに根拠を求める野村監督だからこその見方であるのだろう。
しかし、それだけではいくら当を得たことを言っても評論家、解説者としてのものでしかなく、「だからそれを改善するためにはどう指導するのか」というものがなければ、指導者である監督としての仕事をしたことにはならない。
楽天が、野球脳なら日本一とも言われる野村克也監督に迎えながら勝てないのは、それがないことも原因ではないのか。
監督に深い理論があっても、野球をするのは選手である。理論をプレーに反映させるには実践が必要だ。教室で「ノムラの考え」を抗議してノートに筆記させるだけでなく、実際にノックバットやキャッチャーミットをもって選手と一緒に汗をかかなければならない。一緒に汗をかき、その都度、何が悪いのか、どうすればいいのかを指導し、それが身につくようまた練習に付き合う。選手と向き合ったミーティングと反復練習が必要なのである。
出来の悪い子どもに、いくら立派な参考書や問題集を買い与えても、それだけで成績は伸びない。つきっきりで解かせて、何が悪いのか、どこが足りないのかを見極め、できるようになるまで何度でも問題を解かせる。これは私たちの子どもの教育でもいえることだ。
かつて、長嶋茂雄は高田繁のサード転向の際にシーズンオフもノックバットを握り、名外野手の高田は名三塁手にもなった。西本幸雄は大学の後輩の小川亨をとことん鍛え上げ、勝負強い打撃でチームに貢献させた。
野村にはそれがない。理論と自主性を選手にまる投げしているだけなのである。
それでも過去には優勝できた。南海時代は高畠康真、ヤクルト時代には伊勢孝夫、渡辺進、水谷新太郎らがその役割を果たしたことと、野村自身がまだ若かったので体が動いたのだろう。外様の阪神ではコーチとの意思の疎通も難しかったようで、それができなかった。楽天では阪神時代に比べると多少は自分の仕事がしやすい環境になったようだが、まだコーチが若いのか、それが実現できていないようだ。
今年、首位を行く西武ライオンズのヘッドコーチである黒江透修は、昨年、楽天に招聘という話もあったという。黒江コーチが来ていたら、また違った展開になっていたかもしれない。
(記者:顰見倣)
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