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2008年09月05日(金) 11時45分

初上陸「H&M」の強さ 的確なリサーチ・低コスト追求産経新聞

 世界有数の衣料チェーン、スウェーデンのへネス&モーリッツ(H&M、エイチ・アンド・エム)が13日、東京・銀座に日本1号店を開く。続いて11月上旬に原宿、来秋には渋谷に旗艦店をオープンし、日本市場攻略へ乗り出す。2007年の売上高は約1兆5660億円。30カ国目の進出となる日本を含めて約1600店舗を展開し、その急成長ぶりは“世界最強ブランド”ともいわれるH&M。スウェーデンの本社を訪れ、その実力を探った。(小坂真里栄)

 ≪東京出店≫

 「東京への出店は長年の夢。年に総店舗数の10〜15%出店という世界戦略を維持するためにも日本進出は必要だった」

 スウェーデンの首都、ストックホルム中心街の一角にあるH&M本社で、ロルフ・エリクセンCEO(最高経営責任者)はこう語り、日本上陸に目を輝かせた。

 H&M本社では約1000人の社員が働く。今年1月に移転した新社屋は吹き抜けで、1階はカフェテリア、2〜5階はデザイン部門。100人を超える社内デザイナーが数人でチームを組み、今シーズンから1年先まで、複数シーズンの企画開発を同時に進めている。

 「誰でも欲しいものが見つかる幅広いデザインが魅力」

 デザイン統括責任者のアン・ソフィ・ヨハンソンさんは胸を張る。年に数百万点企画する商品はすべて世界共通。スウェーデン国内向けや東京向けといった特別仕様は一切ない。

 デザイナーらは年に6〜10回、世界中へ市場調査に赴く。これをH&Mでは“インスピレーショントリップ”と呼び、生地の見本市はもちろん、アートや映画、音楽などさまざまな情報を収集。トレンド予測や各地コレクション情報を加味して、世界のどこでも通用するデザインに仕上げるのだという。

 「デザインの良しあしに、価格は関係ない。最新ファッションを多くの人に楽しんでもらいたい」というのが同社のコンセプト。この思想に共鳴した有名デザイナーとの協業は毎回話題となる。

 日本発の有名ブランド「コム・デ・ギャルソン」の川久保玲さんとのコラボレーション商品が11月の原宿店オープンと同時に限定販売される予定で、早くも大きな反響を呼んでいる。

 値ごろ感がある価格設定と利益率の高さも注目されている。ユニクロなどと同様、企画から生産、物流、販売まで一括管理して効率化を徹底するSPA(製造小売業)方式を取り入れているが、同社の場合は自社工場はなく、中国や東欧などに約700の生産委託先をもつ。

 ≪スピード感≫

 世界各地にある20の生産管理基地が、本部の指示を受け、最適な工場に発注し大量に買い付けることでコストダウンを図り、これによって、3000〜5000円のトップスやジャケットという競争力のある価格と、新商品が連日登場するというスピード感ある品ぞろえが実現する。

 同社のコミュニケーション統括責任者、クリスティーナ・スティンヴィンケルさんは「限られた顧客向けのハイファッションと気軽に着られるカレント(流行)ファッション、それに幅広い層へのモダンベーシックという3つの商品群を常に組み合わせた販売戦略が勝因だ」と自信をみせる。

 1年前に発注する商品もあれば、売れ筋情報にすばやく対応し企画から販売まで数週間という短納期で店頭に並べる商品もある。また、短期間の限定販売品の中でよく売れたものを翌シーズンで大量に店頭に並べるなど、「店頭データに機敏に反応して、短期と長期の商品サイクルを組み合わせる」ことで商品を売り切り、常に目新しいファッションをあふれさせる。しかも、ほとんどの商品は値引きせず、定価で売り切ることで高い利益率を確保するというわけだ。

 ファッション業界では、2〜3年後にH&Mは世界トップの衣料チェーンになるとの見方もある。こうした指摘に、エリクセンCEOは「たしかに可能性はあるが、世界一が目標ではない。目指すのは“H&Mのやり方”を続けていくことだ」と、あくまで自分流を貫く覚悟のようだ。

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