2008年08月30日(土) 08時26分
高止まり必至 広がる追随値上げ中国も/中国も“インフレ輸出”(フジサンケイ ビジネスアイ)
7月のCPIが16年ぶりの高い上昇を記録したのは、国際市況に連動するガソリンの値上げに加え、これまでの原材料高を製品価格に転嫁する動きが広がっているためだ。原油や穀物などの市況高騰は沈静化しているが、コスト上昇分を十分に転嫁できていない企業が多く、値上げの動きはまだまだ続く可能性が高い。低価格が武器だった中国からの輸入製品が現地の賃金上昇で値上がりするという中国による“インフレ輸出”も顕在化しており、物価の上昇リスクは根強い。
≪コスト吸収限界≫
「消費者の抵抗感はなお強いが、横並びで値上げに踏み切る企業が増えた」
“物価の番人”である日銀の幹部は、最近の値上げの性質をこう分析する。
これまで価格競争の激しい家電や自動車などの耐久消費財メーカーのほか、価格交渉力の弱い中小企業は、値上げに踏み切れないでいた。
しかし、コスト上昇の吸収が限界に達し業績が圧迫されるなか、どこかが我慢できずに値上げに踏み切り、他社も五月雨的に追随するという動きが広がっている。
第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミストも「エネルギー関連や食料品だけでなく、家電製品や自動車など消費財全般に価格上昇圧力がじわじわと強まっており、物価上昇の動きが、タテからヨコへと広がってきた」と指摘する。
実際、三菱電機が冷蔵庫の値上げを決めたほか、トヨタ自動車もハイブリッド車の「プリウス」や商用車の値上げに踏み切った。
一方で、原油価格の下落を受け、ガソリンは9月から値下げとなるほか、電気料金も一部で下がる。先行指標となる8月の東京都区部のCPIは1・5%増と7月の1・6%から上昇幅が縮小している。
今後の物価動向は、国際市況と製品への転嫁のせめぎ合いとなるが、「9月ごろまで上昇が続き、その後も高止まりする」(熊野氏)との見方が多い。
さらに、中国製品の値上がりという新たな物価上昇圧力も浮上している。
“世界の工場”といわれた中国はこれまで、低い賃金の労働力で生産した安い商品を世界中に輸出し、「デフレ輸出国」と批判されてきた。しかし、経済成長による賃金上昇に加え、人民元の上昇もあり、中国からの輸入製品の価格も値上がりしている。
≪需要伴わず≫
日銀の7月の輸入物価統計によると、ポロシャツが前年同月比8・5%、手袋が9・2%、玩具が9・9%と軒並み上昇した。
原油や穀物の輸入価格の急騰の陰に隠れていたが、中国製品の値上がりも、「国内の需要増大を伴わない『悪い物価上昇』の立派な一因」(民間エコノミスト)となっている。
製造拠点の中国一極集中を見直す動きはあるものの、米国を抜いて最大の貿易相手国となるなど中国依存度は高く、構造的な物価上昇要因となる懸念が高まっている。
日銀の須田美矢子審議委員も28日の講演で、「国際市況が調整局面にあるからといって、インフレリスクに対する警戒を怠るべきではない」と、物価高止まりへの懸念をあらわにした。
ただ、国内景気が後退局面に入るなか、インフレ抑止の利上げに動くわけにはいかない。何よりも、資源高や中国のインフレ輸出は、日銀のコントロール外にある。
物価動向が外部要因に左右される以上、インフレと景気後退が同時進行するスタグフレーションを回避するには、内需主導による景気回復が急務だ。(柿内公輔)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080830-00000004-fsi-bus_all