2008年08月27日(水) 12時40分
悲劇の水難事故現場を検証する(オーマイニュース)
広い大陸の川は長く、ゆったりと流れる。しかし国土が狭く、急峻(きゅうしゅん)な山で成り立つ日本の川は短く、そして一気に流れる。
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六甲山系は、標高1000メートルにも満たない。しかし、市街地のすぐ後背に連なり、そこを流れる川は、まさに、日本の川の典型でもある。
7月28日午後、神戸市灘区の都賀川に、突如濁流が襲いかかり、3人の子供を含む5人の命を奪った。悲劇の場所は、川べりを散歩したり、水遊びしたりできるように、人工的にしつらえた親水公園である。
8月19日、記者はその問題の親水公園に行ってみた。阪神大石駅のホームから見下ろすと、何ごともなかったように、都賀川は美しく整備された親水公園の中を、おだやかに流れていた。
この都賀川親水公園は、阪急の高架下あたりから、ほぼ河口まで南北に続く、距離にして1500メートルほどの長さの、川沿いの公園である。記者は大石の駅から親水公園に降り立ち、北に向かって遡行(そこう)した。正面には六甲の山並みが、間近に迫って見える。
流れる水は美しく、遊歩道を歩く人がそこかしこに散見される。水べりには、水鳥が羽を休めたりしている。説明板によれば、魚もいろいろ生息するようで、鳥を招きよせるエサにもなるのだろう。都会の中にあって、やはりこの親水公園は、オアシスとして一定の役割を果たしているようだ。
道路から川べりに降りる階段状の通路は、いざというときの避難路にもなる。目測ではあるが、おおむね200〜300メートルおきに、両岸それぞれに設置されている。が、先日のような鉄砲水では、間隔が開きすぎて充分な役割は果たせない。
また、当局による案内板は、「増水に注意」という通りいっぺんの従来の注意書きに加え、「天気予報」をチェックするようにとか、「上流の空に雨雲や積乱雲が見えるとき」や「雷が鳴っているとき」には入らないように、というより細かな、より予防的な注意書きが新たに設置されている。
親水公園を北にさらにさかのぼって行くとやがて、事故が起きた問題の場所に出る。今も、鎮魂の花束はそこにあった(合掌)。
さて、鉄砲水の原因であるが、当初は川の上流に雨が降ったからだろう、と見られていた。が、その後の気象データや監視カメラの検証によって、上流よりもむしろ、中流域に局地的豪雨が降った、ということがわかってきた。
さらにそれに加えて、都賀川中・下流域には市街地が広がっており、雨水は側溝を通じて、あるいは道路から直接、川に流れ込んだことも、水量を急激に増やした要因になったらしい。つまり、上流の山の中なら、ある程度、樹木などの保水力があるが、コンクリートとアスファルトの市街地では、水はそのまま流れる、というわけだ。
実際に、親水公園を出て、その先まで川沿いの道を上って行ったが、確かに、大雨が降れば市街地から雨水が大量に川に流入するであろうことが、実感できた。
先にも書いたように、親水公園それ自体は、一定の役割を果たしており、一概にこれを否定することもないだろう、とは思う。問題は安全対策だ。といっても、結局は各人が慎重に注意するしかないのだろうが……。
これは1つの素人的提案だが、今後こうした親水公園を造るにあたって、川の側壁を、フラットな壁にするのではなく、できれば、階段状に構築しておけば、どんなものだろうか。川床と道路の間を結ぶ通路は、緊急時の脱出路としては間隔が長すぎる。従って、最後の脱出手段として、側壁が階段状になっていれば、ある程度有効ではないか、と思えるがどうだろうか。
(記者:斉喜 広一)
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