2008年08月25日(月) 12時02分
ここにもあった、社会保険庁の怠慢 (下)(オーマイニュース)
先日、お盆を前にようやく時間を得て、この件について社会保険庁のホームページのフォームより問い合わせをしたところ、数日後に「埼玉社会保険事務局年金課」より以下(一部抜粋)の返答があった。
■社会保険事務所からの返答
「その他の前納については、納付する時期等により金額等が変わるため、お近くの社会保険事務所へお電話していただくよう記載し、被保険者の皆様のご要望に合った前納を直接説明させていただくこととしております」
ひょっとすると、この対応はクレジットカード納付同様に今年始まったばかりで、体制が整っていないのかも?
そう思い、改めて地元の社会保険事務所に尋ねてみたが、「もう何年も前からありますよ」とのことだった。ざっとネットでも調べてみたところ、その返答を裏付ける決定的な資料が、2003年(平成15年)12月5日付けで、総務省 近畿管区行政評価局より発行されていた。
国民年金保険料は年度途中からでも前納割引メリットを受けられるのに制度の周知が不十分──近畿管区行政評価局行政苦情審議委員会の検討結果を踏まえたあっせん──
ここでは、兵庫県社会保険事務所という特定の事務所に対してではあるが、「周知徹底を図ること」が「あっせん」されている。5年前のことである。本当に「あっせん」を真摯に捉え、兵庫県社会保険事務所が対応していたならば、あるいは社会保険庁が「国民の声」を尊重していたならば、当然より早期にそのための対応があるべきではなかったか?
ひょっとすると、記者だけが知らなかったのか? 念のため周りの数人に訊いてみた。が、皆、口を揃えて「えっ! 知らなかった」だった。
「よく5月とかに思い出して、もう遅いからって諦めて毎月納付してたよ。損した!」という人もいた。
■納付率の悪化の大きな一端は、社会保険庁の体質
この記事を書くにあたり、再度関連書類を確認していたところ、さらなる驚きの発見があった。今年の春に届いていた「社会保険庁・地方社会保険事務所区・社会保険事務所」発行の案内書の一面に、「納付する月分から平成21年3月までの前納は納付期限内であれば前納ができます」とあり、10パターンの前納(6カ月分と1年分とは別の)の期間、前納額、割引額、納付期限が一覧表にまとめられていたのだ。
前納は「1年」と「半年」。そう思い込んでいたがために見落としていた自分のそそっかしさをまたまた反省した。と同時に、2つの問題が浮かび上がってきた。
(1) 社会保険事務所は、自らが発行している案内書を完全には把握していない。あるいは、内部での周知の徹底がなされていない。(仮に、内部での周知が徹底していたとしても、肝心の加入者対応での説明が不十分であれば意味がない)
(2) この前納制度の内訳についての周知の徹底を、少なくとも近年までは怠っていた。(仮に周知のための努力をしていたとしても、現実に多くの加入者が知らなかったのでは、十分とは言えない)
実際、たまたままだ記者の手元に残っていた2005年度(平成17年度)の案内書には、「保険料は、前納(1年分、6カ月分)することができます」とだけあり、多様なパターンについては一切触れられてはいない。それはまさしく記者が記憶している内容であった。
おそらく、前出の兵庫県の行政相談に寄せられた声の主は、記者同様にたまたま何かのきっかけで前納制度の実態を知り、「おかしい」と訴えたに違いない。またこのところの社会保険庁への不信などから、自ら働きかける加入者も増加し、結果として誰が見てもひと目でわかるような詳細説明を載せるに至ったのではないか?
いずれにせよ、社会保険庁と関連機関の呆れた実態を改めて確認するには十二分である。
先日(2008年8月初旬)発表された「平成19年度(2007年度)の国民年金の加入・納付状況」によれば、納付率は63.9%と、前年度比で−2.4%。「平成15年度(2003年度)末以降減少傾向」だという。
記者のみならず、この結果を「当然」と感じる読者は多いはずだ。潜在的には、「納付済み金額を返金してくれるならば、自分も止めたい」と思っている人は相当数に上ることだろう。
一度失った信頼を回復するのは並大抵のことではない。にもかかわらず、いまだに事態の深刻さを十分にわかっていないとしか思えない社会保険庁およびその関連機関の実態に、改めて老後への不安を募らせずにはいられない。
(記者:下平 真弓)
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