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2008年08月19日(火) 21時00分

【解説】「Gmail障害」で浮き彫りになった、無料サービスを業務利用することのリスクComputerworld.jp

 米国Googleは8月15日(米国東部時間)の夜遅く、Webメール・サービス「Gmail」で過去2週間にわたり連続発生していたログイン障害を解決した。ただしユーザーの間では、同サービスの安定性に対する不安がいまだにくすぶり続けている。無料で高機能、しかも使いやすいと評判の人気サービスが企業・組織でも広く普及するか否かは、同社の提供姿勢にかかっている。

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 3度目となる今回の障害も、過去2回と同様、ユーザーが自身のGmailアカウントから閉め出されるログイン・エラーとして発生した。今回は、24時間以上にわたりアカウントにアクセスできないユーザーもいた。

 3度の障害はいずれも、Gmail単独のユーザーだけでなく、コラボレーション/コミュニケーション・アプリケーションからなるGoogleのSaaS(Software as a Service)オフィス・スイート「Google Apps」の一部として利用しているユーザーにも波及した。

 Googleは15日、Gmailのログイン障害を認め、同サービスの“少数の”ユーザーがこの被害を受けたとのコメントを発表した。だが、同社は再発するログイン問題の原因についてすぐにコメントを出さなかったのに加え、被害を受けたGmailユーザーの具体的な人数を明らかにしなかった。

■被害を受けたGoogle Appsユーザーの声

 IDG News Serviceが、Google Appsの複数のユーザーに電子メールで取材したところ、長時間にわたる障害は大きな痛手だったようだ。ITリソースの平等な利用を旗印とする国際的な非営利団体のFAIR(Fair Allocation of Infotech Resources)のデンマーク支部は、つい最近Google Appsを使い始めたばかりだった。ログイン障害発生時、システム開発者、ベンジャミン・バッハ(Benjamin Bach)氏は、ちょうど今週予定されている同支部のWebサイト立ち上げに向けて、同僚らにGoogle Appsの使い方をデモンストレーションしている最中だった。

 3回目のログイン障害は実に24時間以上に及んだ。「最初の2、3日でこれほど長い障害が起こったのでは、Googleの無料ソリューションを仕事に利用していいものか不安になる。アフリカの学校やデンマーク国内のパートナーと、まる1日メールで連絡できないようでは困ってしまう」とバッハ氏は不満を漏らす。ノルウェーに本部を置くFAIRは、開発途上国にコンピュータ製品を供与している団体だ。バッハ氏の所属するデンマーク支部はようやく軌道に乗ったところで、Google Appsについては、ユーザー数を4人から最高20人に増やす予定でいる。

 Google Appsには、無料エディションの「Basic」と「Education」に加え、追加の機能、Gmailに対する99.9%のアップタイム保証、電話によるテクニカル・サポートが付く有料バージョンの「Premier」(ユーザー当たり年間50ドルで)など複数のエディションがある。

 「(高機能なWebメール・サービスを)無料で提供している点は大いに評価できる。だが、突然メールにアクセスできなくなるばかりか、その理由や復旧までの時間をいっさい明かさない姿勢は傲慢だと思う。システム管理者の立場としては、もう少し詳細を知りたいものだ」(バッハ氏)

 海外在住の米国人を対象とする民主党公認団体「Democrats Abroad」のメキシコ支部長を務めるハワード・フェルドスタイン(Howard Feldstein)氏も今回、24時間以上Gmailから閉め出されたユーザーの1人だ。「党大会に向けて多忙をきわめている。私はメールのやり取りだけでなく連絡先の管理にもGmailを活用しており、1日以上にわたってまったく連絡を取れない状態だった」と同氏は憤慨する。

 インドのバンガロールでITコンサルタントを務めるアビシェク・パロルカー(Abhishek Parolkar)氏も、24時間以上Gmailにログインできなかった。同氏の場合、顧客からの重要な請求メッセージが破損したという。

■「無料とはいえ企業向け」。ユーザーが問題視するGoogle Appsの提供姿勢

 アトランタ近郊のPR会社Glinting Communicationsで社長を務めるサディー・アップチャーチ(Sadie Upchurch)氏は、15時間使えない状態が続いたと申告した。「顧客の締め切り間際だったため、顧客からの電子メールを転送/再送するなど、対応策に追われた。無料サービスである以上、ある程度の我慢を強いられるのはしかたがない。日ごろからきちんとバックアップを取るべきだと再認識した」とアップチャーチ氏は振り返る。

 とはいえ、企業や団体の場合、有料のPremierを契約する前に、まず無料のBasicを試しに使ってみるというケースが一般的であり、電子メール・コンポーネントが不安定だと有料エディションにアップグレードする気が失せるというものだ。Googleの場合、個人ユーザーからPremierアカウントを取得した組織に至るまで、あらゆるGmailユーザーに同じ基盤からサービスを提供しているため、Gmailに障害が発生すると全ユーザーに無差別に被害が及ぶ。

 Google Appsは、無料エディションでさえ、企業における従業員のコラボレーションを目的に作られている。カレンダーやワープロ、表計算、プレゼンテーション、Webサイト作成ツールが用意されているのはそのためだ。

 Googleは、わずか2週間で複数回にわたってGmailに長時間ログイン障害が発生したことを、Google Appsにとっての大きな汚点と考えているはずだ。同社には、高いパフォーマンスと可用性を求める大企業にもGoogle Appsを普及させたいという野心があるからだ。今のところ、同スイートのユーザーのほとんどが小規模企業であり、大企業では微々たるシェアにとどまっている。

(Juan Carlos Perez/IDG News Serviceマイアミ支局)

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