2008年08月18日(月) 12時00分
五輪中、毎日がデモのダラムサラ(オーマイニュース)
五輪開催に合わせて中国・北京に渡った記者だが、北京五輪は中国国内でのチベット問題と切り離せないものだと考えている。
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そこで北京だけではなくチベット亡命政府があるインドのダラムサラを見たいと思い、五輪期間中はただでさえ高騰している飛行機代がさらに5割増しになるのを覚悟で、インドに足を延ばした。
■北京市民はもうチベットを忘れた?
北京で中国人通訳のLさんに市内を案内してもらったときのこと。Lさんにチベット問題について尋ねてみた。
「日本だけではなく世界中の多くの人が、北京五輪はチベット問題と無関係ではないと考えている気がする。北京の人たちはどうなんでしょうか」(記者)
「3月の暴動の時は、北京市民の間でもチベット問題のことが話題に上りました。でも、いまは話題にのぼりませんね。北京の人たちは、オリンピックとチベットを結びつけて考えてはいないと思います」(Lさん)
情報統制が厳しいと言われる中国のこと。これはこれで仕方ないのかもしれない。しかし記者としては、そうはいかない。五輪開幕の3日後、記者はインドのデリーに飛び立った。
■ダラムサラは“フリーチベット”が溢れている
ダラムサラは、デリーから北西に直線で約300キロメートル。デリーから夜行バスに乗ると翌朝に到着する。
デリーは北京より暑く、はるかに空気が埃っぽい。一方、ダラムサラは標高約1900メートルで空気も澄んでいる。ちょうど雨季に入ったこともあって気温が低く、Tシャツ1枚では肌寒いくらいだ。
ここにはチベット人が多く住み、日本人を含めた海外旅行者も多い。山あいの小さな町だが、ホテルや飲食店などが充実し、通りは人であふれ賑やかだ。いたるところに北京五輪のポスターデザインを基にした抗議ポスターやチベット旗などが掲げられ、「FREE TIBET」の文字が入ったグッズの専門店もある。
■ダラムサラは北京より熱い!
涼しくて過ごしやすいダラムサラだが、気温とは裏腹に、毎日のように熱い抗議デモが開催されている。
現地の日本人によれば、五輪期間中の毎日、朝に抗議デモ、夜にキャンドルライトが行われている。
デモは通常、アッパーダラムサラ(マクロード・ガンジ)と呼ばれるエリアだけで行われるが、週に1回程度はインド人居住者が中心のロウアー・ダラムサラまで降りる大規模なデモがある。
記者の到着翌日の8月14日にも、ロウアーまでの大規模デモが行われた。日本人や西洋人なども含めて、見たところ300〜400人が、雨の中を1時間半ほど練り歩いた。関係者によると「主催者は参加者数を1000人ちょっとと言っている」とのこと。
「オリンピックに反対するという趣旨ではありません。中国国内の人権問題に抗議するデモです。チベット人たちは、仕事を休んでまでデモに参加しているので、デモ中はチベット人の商店などが閉まってしまうんです」(日本人通訳の目本祐介さん)
同日夜には、ろうそくを手にアッパー内を1周する平和行進。終了後に寺院に入り、ニュース映像などをもとにしたドキュメンタリーの上映が行われた。ここにも300人以上は集まっただろうか。
中国によるチベット弾圧の映像が出ると、チベット人たちの間から「チッ、チッ」と舌打ちが聞こえる。カメラに向かってアピールするチベット人の映像が出てくると、一同大拍手だ。
ある意味、北京よりダラムサラの方が盛り上がっている。
■五輪期間中にこそ、チベットを知ろう
記者は1週間の予定でダラムサラに滞在し、町の様子を取材すると同時に、亡命政府機関の関係者にインタビューを行う予定だ。
しかし亡命政府関係者に、北京五輪に関する見解や評価を求めるつもりはない。
ダライ・ラマ14世と亡命政府は一貫して、北京五輪に賛成の意向を表明していることは周知の通りで、いまさら繰り返す必要もないだろう。
亡命政府への取材目的は、チベット人の行政システムや、インドでのチベット人の生活・文化の現状と課題について語ってもらうことだ。
華やかなオリンピックを楽しんでいる人の気分には水を差すことになるかもしれない。だが、3月にラサで起こった武力鎮圧事件や聖火リレーの混乱を忘れてしまうには、まだ早すぎる。
(記者:藤倉 善郎)
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