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2008年08月15日(金) 11時49分

グレートな中国人民たちオーマイニュース

 前回まで、貧民街やニセモノ市場、五輪開会式の「市民不在」ぶり、中国版新幹線の実態など、北京のネガティブな部分をリポートしてきたが、実は北京滞在はかなり楽しい。

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 総じて、中国や北京市の行政サイドのやることはちぐはぐに見えるが、街中や飲食店で接する北京の人々は記者たちに対して友好的だし、価値観の違いも中国のお国柄だと思えば楽しめる。

■“腹出し”から目が離せない

 日本に住んでいると、中国人観光客のマナーの悪さに心底ムカつく。北京でも、中国人たちは行列に平気で割り込むし、地下鉄ホームでは車両から降りる人にスペースを譲ることなく車内になだれ込んでくる。それでも、王府井などごく限られた中心地の駅は比較的マシだった。

 何かと話題にされ、政府が“撲滅”に乗り出していた痰(たん)吐きは、さほど多くはない。地下鉄の車内で、手に持ったビニール袋の中に痰を吐く中国人を見かけた。彼は外出中、ずっとビニール袋に痰を吐き続けていたのだろうか。ビニール袋が痰で黒ずんだ黄色に染まっていた。

 見ていて気分のいいものではないが、彼なりにマナーを守ろうとしてのことなのだろう。オリンピックのために、それまでの生活様式を無理やり変えさせられる市民に同情も感じる。

 マナーの問題とは少し違うが、街中で中国人がシャツのすそをまくり上げて腹を出しているのをときどき見かける。記者は、これが気になって仕方がない。暑いからなのだろうが、繁華街だろうが庶民向けの団地の前だろうが、どこに行っても必ず腹を出している人がいる。日本の繁華街でこれをやられたらちょっとイヤだが、北京ではこんな光景も当たり前。腹出しを見つけるたびに、写真を撮ってコレクションにした。

■北京市民は優しかった

 中国では、見ず知らずの他人に対して配慮するという習慣がないように見える。列に割り込むなどの行為もそうだが、例えば飲食店で頼んだ料理が出てきても、取り皿やレンゲなど必要な食器がすぐに出てこない、なんてことは当たり前。こちらが言えばすぐ出てくるが、店員はとくだん謝る風でもない。

 店員は中国語がわからない記者たち対して、にこやかに一生懸命、料理の説明をして注文を取ってくれる。サービスがいまいちなのは、決してわれわれが歓迎されていないからではなく、習慣の違いが原因のようだ。

 北京でマンション用に扇風機やPC関連機器を買わなければならなかったが、この時も店員4〜5人がよってたかって応対してくれた。それでも結局、目指した品はなかったりもするのだが、それでもうれしい。

 繁華街のすぐ裏にあった、立ち退きを迫られている胡同に足を踏み入れた時のこと。記者の姿に気づいた住人が、庭先に招き入れてくれた。住人と家の前で茶飲み話をしていた男性が日本語を少し解したため、日本語と英語で立ち退きの条件などについて教えてくれた上に、家の中まで見せてくれた。

 中国人の、他人に対する配慮のなさは気にはなるが、それは単に細かいことを気にしない、グレートな大陸気質のせいなのかもしれない。行政のすることにはちぐはぐさが目立ったが、北京の人々との交流は楽しいことの方が多い。

■インド人は中国人よりグレートだった

 いま、記者はひとりでインドに来ている。到着早々、デリー空港でぼったくりタクシーにしてやられた。街のほこりっぽい空気や、しつこい客引き、物ごいにも悩まされた。インド人は、中国人と比べてもあまりにグレートすぎる。

 ここにいると北京が非常に洗練された都市に思えてくる。デリーも、数日過ごせば楽しめるようになるのかもしれないが、記者はすでにダラムサラという町に移動してしまっている。

 次回から北京リポートをお休みして、「全財産はたいてチベット亡命政府に行ってみた」をお送りする。

(記者:藤倉 善郎)

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