2008年08月13日(水) 18時59分
北京開会式の花火はニセモノだった?(オーマイニュース)
何だかんだと言われながらも、何とか北京オリンピックは開催にこぎつけた。
開会式では、映画監督のスティーヴン・スピルバーグが芸術顧問から退くなどのトラブルがあったが、チャン・イーモウ監督が総合演出を手がけるということで、少しだけ期待していた。
というのも、過去にチャン・イーモウ監督の映画を観て、そのストーリー性と芸術性の高さにひきつけられてしまったからである。
特に『単騎、千里を走る。』(2005年、日中合作、東宝)は、主演・高倉健の人間性がにじみ出ていて、中国映画では珍しく日本人のイメージをうまく表現することができていた。
これまでのチャン監督作品にあった「歴史と絡めた壮大なスケールの作品」ではなく、「高倉健」という人物と京劇の義理人情のストーリーがうまく絡み合い、父と息子、中国人と日本人との、結びつき・思いやり・愛情といった普遍的なテーマが扱われていた。チャン監督にとって、新たな世界を切り開いていた。
そのチャン・イーモウ監督が総合演出した北京オリンピックの開会式は、正直言って、感動した。お得意の歴史絵巻は圧巻で、映像と演者の動きが見事にマッチしていて、まるで映画を観ているようであった。
メイン会場「国家体育場」(愛称・鳥の巣)に、あたかも巨人が歩いて近づくかの様子を、花火で表現していた。
「スケールがでかいなあ。歩くように見せるために、花火を打ち上げる間隔を調整するには難しいだろうなあ。あんなそばにいて、ヘリコプターは大丈夫なのか」
などと感心しながら私はテレビを観ていた。
ところがである。
あれって、コンピュータグラフィックス(CG)による合成映像だったのですか?
Tech Crunch Japanese(8月12日付)によると、28個の巨人の花火の足跡は、CGによる合成画像だったとのこと。時間にして55秒間は、安全上の理由から合成したものだったらしい。北京オリンピック委員会の顧問は北京タイムズに対し、「実際に撮影しようとすれば禁止されただろう」と語り、合成したことを弁護したらしい。
これには賛否両論あるだろう。
私だけではなく、ほとんどの人は実写だと思っていたはずだ。テレビで流れたニュースでは、驚いた通行人の反応が紹介されていた。
映画であればCGを使ってシーンを効果的に演出することもあり、観客もそれを承知で観ている。「あんなことは起こりえない!」と怒り出す観客もいないだろう。
しかし、オリンピックは映画ではない。リアルタイムで行われている北京オリンピックの開会式で、いくら視覚効果を狙った演出だとしても、種明かしをした今となっては少し興ざめである。
国家の威信をかけてそこまでやる必要があったのだろうか。総合演出を手がけたチャン・イーモウ監督は、このことを知っていたのか。
どうやら、28個の巨人の花火の足跡はニセモノで、私たちは映像テクニックにだまされたというわけである。感動してしまった分、がっかりである。
オリンピックに出場する選手たちは、CGによるニセモノの魔法を使うことなく、毎日の厳しい練習を乗り越えて開会式に臨んだ。オリンピックは、人間が持っている最大限の力を発揮できる場であり、そこで繰り広げられるドラマは、筋書きもなければ、凝った演出もない。だから私たちは応援したくなったり、時には選手と一緒に涙したりもする(もちろん、筋書きのある映画に涙することもあるが)。
オリンピック憲章によると、金メダルは「銀台に金メッキ」したもので、銀については純度1000分の925、金は少なくとも6gとされている。
まさか金メダルもニセモノだった、ということがないことを祈るだけである。
(記者:大谷 憲史)
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