「検索結果1ページ目に御社サイトを表示します。ヤフー、グーグルに対応」
「5日で(検索順位)圏外→10位以内へ」
こんな宣伝文句をちりばめて、企業などのサイトの検索順位アップを請け負う「SEO(検索エンジン最適化)」対策ビジネスが、急拡大している。
インターネットの世界は情報の洪水だ。米グーグルによると、全世界のインターネットページ数は7月で1兆を超えた。1998年にはわずか2600万だったから、10年で3万8000倍以上に膨らんだ。
その中から必要な情報を見つけるには、グーグルやヤフーなどの検索サービスが頼みだ。検索サービスは自動的に膨大な数のサイトを調査し、情報内容の充実度など100項目以上の基準で表示順位を決める。上位ほど「お薦め」というわけで、利用者は1〜2ページしか見ないことも多い。
「上位に表示されなければ、サイトを見てもらえない」。SEO急拡大の背景には、企業のサイト担当者のそんな焦りがある。
しかし、本当に検索順位はアップできるのか。
「消えるサイト、生き残るサイト」(PHP)の著書がある宇都(うと)雅史インターネット・ビジネス・フロンティア社長に、「ペット用ミネラルウオーター」という言葉を含むサイトを作って、実験してもらった。
宇都社長はまず、検索サービスが「ペット」や「ミネラルウオーター」に関する重要なサイトだと認識できるように、タイトルなど目立つ位置にこれらのキーワードが効果的に配置されるようにした。また、別のいくつかのサイトに「関連サイト」(リンク)として表示してもらった。これも重要性のアピールだ。
この結果、グーグルでの検索順位は8日間で377位から3位まで上昇した。
SEO対策で検索順位がアップするかについて、検索サービス側は「コメントしない」としているが、一定の効果はありそうだ。需要も年々高まり、2007年に100億円だった国内市場は、10年には160億円に増える見通しという。
ただ、SEO対策が行き過ぎれば、検索サービスの信頼が失われかねない。このため、意図的に順位を上げたサイトを検索されないようにする「取り締まり」も強化されている。
「独BMWのサイトが、グーグルの検索対象から外されたことがある」
米グーグルのソフトウエアエンジニア、マット・カッツ氏が06年2月、自分のブログでこう明かした。
カッツ氏によると、独BMWのサイトは、検索サービスによるサイト調査では「Neuwagen」などドイツ語のキーワードを多用したページが現れるが、一般の利用者が訪れると、車の画像の多い別のページに転送される仕組みになっており、グーグルの基準に反していたという。
もっとも、検索サービスは日々進化し、SEO対策の手法は3か月程度で陳腐化するとも言われる。検索サービスとSEO対策のいたちごっこは、ネットという情報の洪水の中から、適切な情報を探し出すことの難しさを象徴している。