2008年08月08日(金) 11時38分
<北京五輪>日本人建築家「鳥の巣」設計に参加(毎日新聞)
【北京・木戸哲】「鳥の巣」の愛称で知られる北京五輪のメーンスタジアム「国家体育場」の設計に、日本人の建築家、菊池宏さん(35)が携わっていた。「五輪のためという特別なパワーがあったからできた建造物」。菊池さんがそう表現するスタジアムに8日夜、聖火がともり、五輪はいよいよ開幕する。
国家体育場は南北333メートル、東西294メートル、高さ69メートルの巨大施設。最大で9万1000人を収容できる。さまざまな長さや形の鉄骨を組み立てて本体を殻のように包み、鳥の巣のように見える外観ができあがった。鉄骨の総重量は4万2000トン。ピーク時には建設現場で約8000人が働いていたという。
菊池さんは施設の設計を請け負ったスイスの建築事務所「ヘルツォーク&ド・ムーロン」に00年から在籍していた。初めてイメージ図を見た時の印象は「クレージーな建物」。当時はまだ、図面にアイデアが描かれているだけで、鉄骨をどう組み立てるかは誰も考えていなかったという。
「担当者は大変だろうな」。人ごとのように思っていたが、「手助けしてくれ」と頼まれ、外殻の設計を引き受けた。特殊なコンピューターソフトを駆使し、04年初旬から約3カ月かけて作業を進めた。3、4人が担当を断るほど難しい仕事だった。
その後、菊池さんは退職して独立。東京で個人事務所を構えながら、日本で施設完成を見届けた。「あれだけ複雑な建造物ができたのは奇跡に近い。中国人の底力を感じた」。安い人件費と豊富な労働力、そして五輪に向けた社会の高揚感。「多くの条件がそろう現在の中国でなければ、完成できなかったはずだ」と実感した。
開会式では、世界の視線が国家体育場に集まる。菊池さんは「工事に携わった中国人に拍手を送りたい」と話している。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080808-00000041-mai-soci