2008年08月07日(木) 12時22分
<北京五輪>米国の旗手にスーダン難民…6歳のころさらわれ(毎日新聞)
【北京・高橋秀明】8日の北京五輪開会式で、米国選手団の旗手にスーダン難民のロペス・ロモング(23)が選ばれた。6歳のころ、武装組織にさらわれて家族から引き離された末、監禁場所から脱出して米国に渡り、この夏、陸上男子千五百メートルで米国五輪代表の座に輝いたロモングは「開会式は生涯最高の瞬間になると思う」と感慨に浸っている。
内戦中のスーダンで武装組織にさらわれたロモングは、少年兵としての養成などを目的とする収容所に監禁された。ある日、仲間とともに意を決して脱出し、3日間さまよった末にケニアの難民キャンプにたどりついた。以後10年間をそこで過ごしたある日、ロモングは00年シドニー五輪の話を聞き、街頭テレビ見たさに8キロの道のりを突っ走った。
白黒画面には、男子四百メートル金メダルのマイケル・ジョンソンら米国陸上界のスターの姿が写し出され、星条旗が揺れ、国歌が流れた。この時の強烈な印象が、ロモングの人生を変えた。1年後、「ロスト・ボーイ」と呼ばれる内戦孤児支援プログラムで米国に渡り、ニューヨーク州の家庭に引き取られた。ここで陸上の才能が開花し、昨年7月には米国市民権を取得。家族とも再会を果たし、今年7月に米五輪代表という「夢」を実現した。
ロモングは「米国チームが旗手に選んでくれるなんて、信じられない。星条旗は私という人間を象徴するものであり、私の人生のすべてなんだ」。絶望的な状況に差しこむかすかな「希望」の象徴だった星条旗を持ち、596人の米選手の先頭を行く。
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