通信大手3社が個人ユーザーを対象に携帯電話と固定電話の一体化サービスを拡充している。「携帯—固定」間の通話無料化や請求書の一元化、固定電話への着信を携帯電話に通知するサービスなどが中心だ。携帯電話との連携を強化することで、地盤沈下が続く固定電話をてこ入れする狙いだ。(山本貴徳)
■付加価値KDDIが1日から始めた一体化サービスは、同社の固定電話、IP電話からau携帯電話にかける場合の通話料を24時間無料にした。au携帯からかける場合は自宅に限って無料となる。固定と携帯の請求書を一本化すれば他の特別な手続きは不要だ。ソフトバンクも6月から、同社の携帯とIP電話間の通話を24時間無料にしている。
NTTドコモは市場シェアが高く、特定の通信会社を優遇するサービスは制約されているため、こうした無料化は事実上できない。
このため、ドコモは携帯の付加価値を高める一体化サービスで対抗する。6月から始めた「ホームU」は、自宅で携帯をIP電話と同じように使えるサービスだ。NTT東西の無線LANを経由して動画など大量のデータを送受信できる。
■てこ入れ通信各社が一体化サービスを重視するのは、拡大する携帯電話ユーザーを取り込み、低迷する固定電話事業を立て直すためだ。
総務省によると、2007年度末の固定電話の契約数は5123万件。10年連続で減少し、携帯電話を含む移動通信(1億734万件)の半分以下まで落ち込んでいる。
KDDIの場合、au携帯の保有世帯数(約1370万)に対して、固定電話の加入世帯は約180万で1割強にとどまる。一体化サービスを充実させることで、「NTTが独占する固定電話市場を崩す」(小野寺正社長)戦略だ。無料化サービスによって年間約20億円の減収となるが、固定電話の契約数が増えれば基本料金の収入増も期待できるというわけだ。
一体化サービスは、05年秋、英ブリティッシュ・テレコム(BT)が世界で初めて実施し、その後、米国、韓国などでも導入されている。
■企業向けが先行携帯—固定の一体化は、法人向けサービスが先行している。NTTコミュニケーションズやKDDIのサービスは、携帯電話を使う場合、屋外では携帯電話網に接続され、建物の中では固定電話網に接続されるというものが一般的だ。
屋内で携帯電話を使えば通常、建物の外にある携帯電話網に接続される。これが建物内に設置した無線LANを通じて固定電話網に接続されることで、つながりやすく、通話料も安くなるメリットがある。ドコモの「ホームU」はこうしたサービスを個人向けに導入したものと言える。
個人向けの一体化サービスも将来的にはさらに発展する可能性が指摘されている。高速化・大容量化が進む固定電話網のメリットを生かしたサービスが実現できるかがカギとなりそうだ。