2008年07月31日(木) 11時10分
近くにもいる“マニュアル症候群”の患者たち(オーマイニュース)
休日、スーパー銭湯に行った。 ここは、靴箱もロッカーも 100円玉がいる。 財布に100円が無かったので、小銭を出して、100円に両替を頼んだ。すると、「これは使えませんが…」といって、5円玉を指差した。
なんと、日本国が鋳造した貨幣を、日本国内で商売している店が、「使えない」と言ったのだ。
「これ全部で100円分ありますよね。これ(5円玉)は、日本中どこでも通用する、国のお金ですよ!」と私。
それでも、店内では使えないとか、グズグズ言ってたが、こちらが一歩も引かない様子を感じ取ってか、しぶしぶ100円玉をよこした。
気持ちはわからないでもない。5円単位の料金設定にはしてないのだから、5円玉を受け取るのはわずらわしいのだろう。もしかすると、営業マニュアルかなんかで、5円以下の貨幣は受け取るなとでも言われているのかも知れない。
この手の融通の利かなさ、サービス精神の欠如、マニュアル化した対応は、他の場所でも体験する。
例えば、配送会社の書類配送サービス。
サイズと厚さで料金が違い、限度以上だと受け付けない。それはわかる。ただ、厚さを測る二股の物差しのようなもので測って、多少窮屈だが入る程度も厚さだと、受付ないことがある。
以前は多少オーバーしても、店によって受け付けてくれることもあったが、今は厚さが範囲内でも、スパッと入らないと撥ねつけてくる。
理由を聞いたところ、「配送会社から、スムーズに入らないものは受け付けるなと言われている」という。別の店でも試しに聞いた。すると、「ギリギリのものに物差しを差し込むと、荷物が傷むといってクレームをつける客がいるから」というもの。
答えはマチマチだが、範囲内でも多少余裕がないものは、はねるように言われているようだ。
銀行でも同様だ。15分以上窓口で待たされれ、ようやく順番になったら、窓口の係りの女性の脇にいる女性行員がこういったのだ。
「入り口のATMでもお振込みはできますが、こちらの窓口でよろしいでしょうか? ATMの方がお時間がかかりませんが」
入り口でそう案内するならわかる。15分待って順番が来た客にこれを言ってどうするのか。
自分の仕事に関することでも、ある患者が憤慨していたことがある。
この患者は「頭の右側の内部全体が、言葉でどういっていいかわからないが、変な感じ、圧迫感というか不快な感じがする」と脳神経外科で言った。すると医者はこう答えたという。
「そんな漠然とした言い方ではわからない。どこが痛むのか部分も特定できないような症状など、病気として判定できない」
不調があり、辛いから医者に行ってるのに、こちらの説明が医学的でないと言って批判されるのはおかしいという主張だ。
これも患者さんの言うことはもっともだと思う。自分が学んだ知識や判断基準から外れた症状を訴えると、それは学問的でない言い方だからそんなものはない、というのと同じだ。
非常に杓子定規で応用に効かない対応だ。これも行動のマニュアル化と言ってもいい例だろう。
こんな対応なら機械と大差ない。全て機械化、コンピュータ化しても問題ないだろうし、マニュアル化の目的が効率化にあるなら、人を機械化するより、サービスや接客を機械化した方が、効率的だろう。
今、アドビやペプシなど、アメリカの大手一流企業のCEOなどに、多くのインド人が就いているが、インドの大学では、徹底的に学生に考えさせ、学生同士が意見交換や議論を戦わせ、自分なりの考え方を身に着けさせる指導方法をとっている。その成果が国内外での、インドの大躍進につながっているのだろう。
それと対照的に、わが国では、異論を唱えたり、多数派に同調しない者はつまはじきにされたり、陰湿ないじめにあったりするような精神風土が根付いているように感じる。
その一例が、マニュアル化され、誰がやっても同じ結果になるような、融通と応用の効かない対応・人の大量生産である。
インドは以前、私が滞在していたころには想像もできないほど、近代化し、経済的に発展しているが、そのルーツは自由な発想と意見対立を恐れない精神風土と教育にあるような気がする。
いま20〜30代の若者中心に小林多喜二の「蟹工船」が読まれているという。以前は年間5000冊も売れればいいほうだったそうだが、昨年(2007年)は40万部売れたという。 蟹工船は人間の機械化、奴隷化と、それを支配する企業家と政治家の構造を描いている古典的プロレタリア小説だ。
(記者:葉月 昌)
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