2008年07月30日(水) 11時29分
「これって蛇ですか?」という若者の言葉に一同ずっこけ(オーマイニュース)
行きつけの江戸前のおすし屋さんで「小肌」を頼むと、
「今日は新子が入っていますよ!」
と威勢の良い返事が返ってきた。日ごろの忙しさに追われ、この時期が旬というのをすっかり忘れていたが、今しか食べられない貴重なすしダネを早速注文することにした。
猛暑真っ盛りのこの時期、今年も旬のすしダネ「新子」に出会うことができた。ご存じの通り、新子は出世魚で、「新子」→「小肌」→「ナカズミ」→「コノシロ」と体が大きくなるにつれて呼び名が変わる。当然、新子は最も小さいので、この仕込みがまた大変で、すし職人の時間とエネルギーを奪う。
しかも今の時期の「新子」はキロ数万円もするそうだが、そこは江戸前すし屋の心意気、しっかり築地で仕入れてくれてある。振り塩を施し、酢で締められた小さな新子が竹ザルにきれいに並べられたのを見せてもらうと、それだけでも圧巻である。
そこから3枚の新子を重ねて握ってもらう。それを手にとって食すと、すっきりした酢の香りがなんともいえない良い味を出していた。
偉そうには書いているが、これは実は数年前にすし屋の板前さんから教えてもらった受け売りである。そんな受け売りを、その板前さんとやりとりを交わすことで、今年も夏の季節感を味わうのである。
しばらく歓談を続け、おなかも満たし席を立とうとしたころ、若いカップルが隣に座ってきた。
「飲み物は何にしますか?」
「ビールでお願いします」
と、お決まりの接客と注文が終わり、
「今日は新子が入っていますよ!」
と板前さん。
「それって珍しいんですか? じゃあ、それを握ってください。」
と若い男性。
新子が並べられた竹ザルが取り出され、流れるような職人技で
「はい、お待ちどおさま!」
と威勢よく板前さんが2貫の新子を握り並べた。その瞬間、若い男性がこう言った……。
「これって蛇ですか?」
そこに居たお客さん、板前さん、それを聞いた一同がずっこけた。
「お客さん、新子は今の時期はキロ数万円もするんですよ」
という板前さんのフォローもむなしく、
「ああ、そうですか」
と冷ややかなその男性。
江戸前ずしの伝統技術、すしの歴史、日本の食文化、季節感……、さまざまな言葉が頭を駆け抜けた。
しかし数年前の自分もまったく同じ立場で何も知らなかった。彼ももう少ししてから知ればいいのか…… と、変に自分を納得させながら店を出た。
そうは言いながらも、江戸前の職人技術によって初めて食べられ、また日本ならではの季節感を味わえる「新子」という食材を大切にしたいものである。
猛暑続く今年の夏、おすし屋さんで「新子」を味わってみてはいかがでしょうか?
(記者:守山 治)
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