2008年07月24日(木) 18時43分
性同一障害はメディアの過剰反応だったのか!?(オーマイニュース)
■盛況だったサイン会
今から1カ月ほど前の2008年6月、東京銀座にある福屋書店で、椿姫彩菜(つばきあやな)によるサイン会・握手会が行われた。彼女は今現在、ファッション雑誌「小悪魔ageha」のモデルとして活躍、人気を集めている。
このサイン会・握手会は、初のエッセー本「わたし、男子校出身です。」(ポプラ社)の出版イベントだった。私は友達と2人で行ったのだが、整理券が配られるほど列ができ、書店外にも人が溢れるほど盛況のうちに終わった。
■性同一に対する誤認識
本の題名からわかるように、彼女は性同一障害をもって生まれた。この性同一障害とは本来の性とは間違った身体で生まれてしまうこと。ドラマ「3 年B組金八先生」(2001年、TBS)で女優上戸彩がこの性同一障害の主役を演じ、一躍有名にもなった。最近ではTVや雑誌で自分が性同一障害だと公言する人も増えてきている。
サイン会でも「めっちゃきれいだね」「男とは思えない」という言葉が聞こえてきた。大体の場合、次に上る話題は彼女らがまだ男なのか、女なのかだ。つまり性転換の手術を受けたか、肉体的にはどっちなのかという話なのだが、これはおかしな話だ。
前述したように、本来の性と真逆の身体で生まれただけで、決して2つの性を持つわけではないのだ。本でも椿姫さんはこう書いている。
「手術前も、私は一度も『男』だったことなんてない。今も昔も『女』なのに」
彼女らに対して、男か女かを考える時点で私たちは性同一障害について間違った認識をしていることになる。
■センセーショナルな露出
発売当初、この本は、ニューハーフのモデルのエッセー本として、メディアにセンセーショナルに取り上げられた。サイン会前日にはTV出演し、雑誌にも取り上げられた。当日もマスコミが取材に訪れていた。本はすぐに重版が決まった。
しかし、出版から1カ月たった今、振り返ってみると、これらはメディアの過剰な反応だったように思えてならない。本屋に行くと、この本は平台で山済みになっている。
また、インターネットのベストセラーのランキングを検索してみても、サイン会を行った福屋書店、ポプラ社のサイトぐらいしかヒットしなかった。また、大手ネット通販サイトAmazon.comのトップ100でもランキングされていなかった。
出版界は不況だと言われている。また、残念なことに、どんなにいい本であろうが、家の本棚に同じ本を2冊も3冊も置くことはない。そんななか、タレント本は続々とヒットした。
例えばお笑い芸人の麒麟・田村裕の『ホームレス中学生』や劇団ひとりの『陰日向に咲く』などだ。それだけに出版界にも過分に期待感があったのだろう。
性同一性障害に過剰に反応したマスコミ、書店に残った本が返品されることを思うと複雑に感じた。彼女自身はどう思っているのだろうか。
著者の椿姫彩菜(つばきあやな)さんはフランス語が堪能で、翻訳なども手がけ、女性向けお菓子のプロジュースや福祉の分野では児童養護施設作りなどにがんばっている。
また、彼女は大学生ということで学業にもいそしんでいる。性同一性障害だからではなく、そうやってがんばっている彼女の姿を応援したい。
(記者:戸高 愛梨佳)
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