2008年07月23日(水) 13時19分
「磯部やな」で見た鮎焼き(オーマイニュース)
JR信越線磯部駅で降りてまっすぐに商店街、磯部公園を突っ切り坂を下りると右手に鮎(あゆ)料理を食べさせてくれる安中市観光協会直営の「磯部やな」がある。
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磯部温泉のこの辺は鮎の稚魚が放流される場所で友釣りのポイントでも知られる所だ。解禁や休日ともなると20人以上の釣り人でにぎわう所であるが、今日は1人だけ。それでも私の見ている間に2匹上げたようだ。
鮎漁も漁協にとっては採算がとれにくく、釣り愛好家にとっては不満な状況になっていることは以前から知られていた。
たまたま遊びに来ていた漁協関係の知人に会ったので「今はどうですか」と聞いてみた。
「以前は県水産試験場の稚魚を放流していたが、交配が進むと鮎の習性である“上る”ことが亡くなり、“下る”ようになったため、静岡産を放流するようになった」と言う。
「それに加えて鵜害もあって状況は良くない」らしい。しかし、ポイントによっては釣れる所もあり、7月下旬には釣れるようになるのではないかと言う。
浅瀬のポイントでは鵜の被害を防止するために細工が施されているが、鵜にはどこも手を焼いているらしい。この辺も利根川あたりから上ってきた鵜による被害が大きく、稚魚を購入し放流している漁業組合も大損害を被っているようだ。
いかに釣り愛好家を満足させるかという状況ではない。そのためか市観光協会直営の「磯部やな」でも鮎は天然物ではなく、養殖ものを使っている。
ちょうど、活魚を運ぶ車が入ってきた。樋(とい)を使っていけすへ移す所だ。30cm程の元気の良いピンピンはねる鮎が大量の水とともにいけすへ流し込まれる。
今日は休日で、団体客もあり早めの鮎焼き作業になったようで、私が訪問したときは2回目の作業が始まる所であった。中央に炭火の囲いができていてその周りにくし刺しの鮎を刺す床ができている。
1回焼くのに40分かかる。お店によって違うそうであるが、ここでは尾とヒレに塩を付ける。これを化粧塩と言うらしい。最初の腹の側を火にむけている。「どうしてですか」と聞くと「腹の方から焼くと仕上がりが良い」と言う。塩の付いていない鮎もいる。これには秘伝のタレとみそを付けて田楽にするのだそうだ。
炭も火持ちが良く、管理が楽な備長炭を使っていたが、今は市が焼いている普通の炭を使っているので火の管理が大変だ。焼いている途中で炭を補給しなくてはならないが、灰が飛んで付着するとダメになる。そのためにある程度焼いて表面が乾いてくる時点で追加するのだと言う。
後は全体を見ながらこまめに回す。食べ物は見栄えも大切で、ただ焼いているだけではなく、いろいろ工夫がされている。「どの位焼くんですか」と聞くと、「昨日は休日で250匹焼いた。多いときはお盆で600匹焼いたことがある。焼き床に2重にくしをたてる。冗談を言っている暇などなかった」と笑う。
皆汗だくだくだ。しょっちゅう水分を補給している。ここはアカシアが植えてあり、川風が吹くので助かるらしい。
予約のないお客さんも増えてきた。お孫さんの手を引いて年配の男の人が「ほれ、焼いている所だよ」と近づいてきた。奥さんが「近づくと危ないよ」と声をかける。「おいしそうね」と話しながら入り口へ。焼き手は「いらっしゃい。どうぞごゆっくり」と声をかけた。
1匹600円では、われわれには手が出ないとお互いに笑い合う。
8月14日午後15時から観光協会による「やな」での鮎漁のイベントがあるそうだ。そのときにまた来ますと言って「磯部やな」を後にした。
(記者:矢本 真人)
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