2008年07月18日(金) 08時02分
【Re:社会部】作りもの以上のドラマ(産経新聞)
ある詐欺事件の渦中にいる男が突然、行方をくらませました。すぐに捜査当局が逮捕状をとり、男の所在捜査が始まりました。
銀行に照会して現金を引き出した場所を割り出したり、親族宅を回るなど、男の足跡を丹念に洗います。しかし思うような成果は得られませんでした。
「少し目先を変えようか」。捜査が始まって9カ月、方針が変更されました。「必ず1度は戻るはず」と、かつて男が住んでいた街に捜査の軸足を移したのです。その初日でした。
漫画喫茶で男の写真を見せると、店員は「ああ、よく来てますよ」。小躍りしたい気持ちを抑え「来店したら連絡を」と告げ、店を出ようとした、そのとき。エレベーターから出てきて鉢合わせしたのは捜していた男でした。
逃げられたら後がないかもしれません。男が個室に入ったのを見届け、付近にいた同僚を電話で呼び、踏み込みました。「〇〇さんですね」。無事、逮捕に至りました。
ドラマの話ではありません。今年、東京地検特捜部が手がけた事件の一幕です。所在捜査を担ったのは検察事務官。人気ドラマ「HERO」で女優の松たか子さんが演じたことでご記憶の方も多いのではないでしょうか。事実は小説より奇なりといいますが、捜査の日常には、ときに作りもの以上のドラマがあります。(弘)
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