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2008年07月17日(木) 14時28分

7月15日一斉休漁・漁業現場の現実ツカサネット新聞

7月15日国内の20万隻の漁船が漁をストップさせる。また、養殖漁業者も出荷を控える。
今、日本の漁業は窮地に置かれている。それをアピールするための行動だ。

船舶の燃料となるA重油は5年間で3倍になった。生産コストの32%を燃料が占めるという現状だ。漁業者は燃料費の補填を求めて政府・自民党に要請をしているが、補填には慎重で相変わらず暫定御税率をかけて政府収入はしっかり確保している。

漁業の現状は深刻だ。私の地元も深刻で、6月20日フジテレビ特ダネでも特集で紹介された。
地域を支える産業の柱、みかんと漁業が燃料コストアップを転化する方法が無く、廃業や転業やむ得ない状況となっている。 

地元の高校の中には学校行事としてボートレースが行なわれる。海と共にある街である。
しかし今この街を天候変動による漁獲量の激減、原油高高騰による養殖産業への打撃で経済は停滞。長期的ビジョンそして短期的カンフル材において業界も自治体も効果的な対応を行なっているとは言い難く、破綻に向っているといってよいだろう。

そのせいかネット上の掲示板は行政への不信で賑わい、巷では自殺者が増え、商店は閉店しシャッター街が広がり、企業の撤退によって年度が変わるたびに街は暗くなっていく。
今やこの街の主要産業は?との問いに誰もが口を揃えて「公務員」と嘆きにも似たジョークをとばす。

そんなこの街は日本一の生産量を誇る産物が多々ある。真珠生産高2年連続日本一、養殖鯛生産量日本一等々。そんな生産高をほこるこの街でさえ深刻な現状から、その他の地方都市の窮状は察することはたやすい。


冒頭挙げたように、現在漁に出る時の経費の30%を燃料が占める。
一回の漁で必要な燃料をペイするには5万円が水揚高いとして必要だが、2万3万の日が続くこともある。様々な経費削減や生活の切り詰めを行っても今以上の燃料代の値上がりは、自助努力の限界を超えることになる。

気温上昇など様々な環境の変化により漁獲高も減っている。本来、流通量が減れば単価は上昇するものだが、単価は上がるどころか下がることさえある。
何故かというと価格決定権は漁をするものには与えられていないて、セリによって価格は決定するからだ。
そしてそのセリでの価格が上昇しないのは、大手スーパー・量販店が販売価格を抑えるために仕入れ値の上昇を抑えているのである。より安く仕入れユーザーに販売するために、漁業がしわ寄せをこうむっているのだ。そしてそこに燃料費アップというダブルパンチである。

スーパーはこの一斉休漁でも、大して影響はないという。養殖物も出荷停止するなら冷凍物を増やして対応するという。
そして首相は「今の予算を大いに活用することが先決」と言い、燃料補填など漁業の窮状への対応は見送っている。漁業者は四面楚歌だ。これでは一斉休漁を行なっても、消費者に自分たちの行動を認めてもらえる土壌さえも用意されないと同じだ。

そんな漁業関係はこの危機的現状に際してどのような努力をしているのか。
一部、魚市場では、市場が価格補填し価格下落を抑えている。また、燃料費削減の観点から、漁場近隣での水揚げができるように市場同士が提携するという動きもある。漁獲高の減少にともない、優良漁場を追い求めると燃料がかさむというジレンマの中で、いかに燃料を使わずに漁を行なうかというアドバイスや研究も重ねている。

また、一部資本力のある企業では、中国へ販売ルートを構築したり、養殖物を中国へ輸出している。13億もの人口だから一握りの金持ちといっても購買層は巨大なマーケットだ。中国という巨大な胃袋が日本の漁業者を助ける結果になるのかもしれない。

今後私たちは、目の前で獲れている魚を中国から高値で買い戻して食べるのだろうか?
それとも、いまだ明確な解決もされていない工場を通して、加工されたものを食べることになるのだろうか。輸入に頼らない食糧確保が求められている今、販売者・政府・消費者の行動は正しいと言えるだろうか。
海からの恵みへの感謝とともに、豊饒な海の復活を目指すことは大切なことだと思う。私たちは四方を海に囲まれているのだから。

いずれにしろ、今漁業に起きている問題は、電気製品や自動車などでも起きている問題に似ている。製造会社の下請けなどへの強力なコスト削減要求によって利益が確保されている点だ。
漁業は価格決定権をもっていないため、スーパーや販売者が自社が競争するために引き取り価格を抑える。そして漁業はそれを飲まざるを得ない。日本の経済・流通におけるシステム上の問題を、原油高騰に注目するあまり見失っているのではないだろうか。
巨大企業や流通グループが製造における中小零細企業へのパワハラのようなコストダウンのしわ寄せ。そして農業漁業の生産原価への思慮無き、小売業の価格競争のしわ寄せ。


せめてセリに対して、コストが最低価格に反映されている状態ではじめることを、出荷者・購入者の互いの良心のもとで行なわれることが必要ではないだろうか。政府が補填に取組めないというのなら、せめてコストが最低限、価格に反映できる仕組み作りに早急に取組むことを約束しなければ、一斉休漁という、スーパーなどがいう小さな抵抗は、大きな波乱を巻き起こすことになりかねない。



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(記者:竹山壽)

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