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2008年07月17日(木) 17時19分

教育格差が広がっている【韓国】ツカサネット新聞

夏休みに韓国の仁川国際空港や釜山金海国際空港にいると、スーツケースを持った小学生のグループをよく見かける。大人が引率していて修学旅行にでも行くような感じなのだが、実はこの子たち、アメリカやオーストラリアへ短期留学するのだ。日本でも親子ホームステイなどのプログラムがあり、英語圏へ語学研修に行ったりしているが、その内容には雲泥の差がある。

日本の子供は現地との文化交流がメインで、英語の勉強は二の次だ。子供が英語に親しんでくれれば、親としては「参加した価値あり」ということになる。しかし、韓国の子供たちは、現地で一般学習をする。英語は韓国で学習済みで、英語の授業に参加して慣れることが目的なのだ。本人が気に入って、そのまま現地の小学校へ編入というケースも少ない。韓国人のコーディネーターが子供たちの生活をフォローする態勢が整っているので、親としても大きな不安はない。カリフォルニアなどには韓国人の子供専用の寄宿舎があり、韓国人子弟専用の授業も開講されている。

釜山で開業医をしている知人の次男は、小学6年生の途中で休学し、アメリカへ2年ほど留学した。本人はそのままアメリカで進学したかったのだが、韓国の大学を卒業してほしい彼は、次男を釜山の私立中学に入れた。
でも、これはレアケース。アメリカへ長期留学する子供の多くが、そのままアメリカの大学を卒業する。「優秀な子はアメリカで学んだほうが伸びる」と考えている韓国人が多いのだ。
小学生時代にアメリカで暮らした次男の英語はほぼ完璧だから、韓国で受験に失敗しても、最悪、アメリカの大学へ入ることができる。
このような子供の絶対数は日本より多い韓国だが、ほんの一握りの子供しかこうした恵まれた環境にないことも確かだ。

1970年代、80年代、韓国での生活に嫌気が差したり一括千金を夢見る人たちが、全財産を持ってアメリカに渡った。そしていま、アメリカで教育を受けた韓国人の子弟が帰国して各界で大活躍している。
最近は、一家でアメリカへというケースはまれで、上述のように子供を海外に送り出す。このとき、子供の世話をするために母親が同行することも多い。こうなると、母親と子供は海外、父親は韓国ということになる。

このような状況になっているのは、韓国の学校教育に問題があるからだ。

民主党政権が続いたこの10年間で、悪い意味での平等教育が実施されたために、公立学校の学習指導体制が崩壊し、子供たちの学力が低下してしまった。その一方で、私立学校が伸張し、「良い大学へ行くなら私立学校へ」という潮流が出来上がった。

知人の次男が通っている私立中学は、年間の学費が100万円以上するが、そのかわり授業の質は韓国でも最高レベルで、早朝から深夜まで生徒の面倒を見てくれる。勉強ばかりでなく、課外授業やボランティア活動などの情操教育にも力を入れている。
どうして彼が次男をこの学校に入れたかというと、長男を公立学校に入れて失敗したからだ。長男が入学したのは、成績の良い子供が集まる伝統校だったのだが、彼が通っていた時代とは学習環境が大きく変わっていて、学校の勉強だけでは不十分で、息子をいくつもの塾へ通わせなければならなかった。

今の韓国では、お金がなければ子供に高いレベルの教育を受けさせることができない。
ちょっと教育熱心な家庭なら、子供が1歳になれば、積み木やお絵かきの家庭教師を呼ぶ。ほとんどが若い女性なので、子供も楽しく遊べるようだ。自分で歩いて外出できるようになると、ハングル、英語、楽器、水泳などを習い始める。

そして、4歳くらいで幼稚園へ入学するのだが、英才教育をほどこすところは、月謝が10万円もする。ちなみに、一般の幼稚園なら2、3万円ですむ。

最近は、「頑張る親」と「諦めた親」による子供の教育格差が広がるばかりで、大きな社会問題となっている。同じ潜在能力を持った子供でも、親の収入や意欲によって大きな差が出るからだ。
1980年代までの公立学校は、子供に弁当さえ持たせれば、学校の先生が夜の9時、10時まで勉強の面倒を見てくれた。先生へ付け届けをしなければならないといった弊害も多かったが、「昔のほうが良かった」と考える韓国人が増えている。

李明博大統領が「全国で教員を増やし、小学校に英語の授業を導入する」と発言しているが、いまは輸入牛問題で手一杯の状態で、早期導入は難しいようだ。
北朝鮮と統一しないかぎり、韓国は資源がない国でありつづける。日本にはまだ巧みの技があるが、韓国にはマイスターがいないから、世界とはソフト一本で勝負しなければならない。

教育レベルの低下は、国民生活全体に影響を及ぼす重大な問題なのだ。

(記者:阿伊宇得憶)

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