2008年07月16日(水) 11時54分
給与口座の選択は「職務」、それとも「ボランティア」(オーマイニュース)
6月から店周辺の清掃を「ボランティア活動」として勤務時間外扱いとした神奈川県相模原市の大型ショッピングセンター(SC)で、今度は給与振り込み口座を、同SC運営のスーパーが傘下に持つ銀行に指定するよう全従業員に求めることを決めた。
7月下旬から順次説明会を開催し、通知する。説明会開催にむけた資料によると、傘下の銀行を指定しない従業員は「理由書」を作成し、店長を通して人事部あてに提出しなければならない。ボランティア活動の取り扱いに続いて、従業員の間で再び波紋を広げそうだ。
給与口座をスーパー傘下の銀行に指定する要望はこれまでも何度となくSC内で伝えられてきたが、今回初めて、全員に対し説明会を開き、1。改めて給与口座を傘下の銀行に指定すること、2。指定できない場合はその理由を書いて店長あてに提出すること──を全従業員に求める。
本社から各SCに配布された資料によると、背景には、2007年10月に開業した銀行の業績進捗が計画よりも遅れ、早期の改善が求められていることがあるという。
資料は各SCに対し、「グループの全面的なバックアップを必要としている点をご理解いただきたい」と改めて強い協力要請を求め、「今こそ、グループ30万人の従業員の総力を結集することで、どれほどの力を発揮できるかを示すときだ」と発破をかける内容が続く。
その上で「(管理職の)皆さまにはぜひとも率先して部下の方々にご指導頂きたく、重ねてお願い申し上げます」と結んでいる。
また別紙の説明会に向けたマニュアルでは、「従業員一人ひとりが『銀行』を支え、必ずこの事業を成功に導いて行かなければならない旨をご説明下さい」と強調している。
文書は結局、全体を見渡せば、会社の窮状を綿々とつづったような内容だ。「協力を」と言われれば致し方ないかな、と思う気も沸いてくる。
しかしながら給与口座に指定しない場合、店長を通して人事部あてに理由を提出することを求めるなど、単なる要望にはとどめていない。文書は「理由書の提出で個人に不利益を与えることはありません」ときちんと断りはいれている。とはいえ、どこか従業員を「支配」の対象と見ている感もぬぐえない。
どうして個人の自然な気持ちに訴え、委ねられないものなのか。
実際、給与口座の変更はクレジットカードなどの変更手続きなども絡み、煩雑だ。
傘下の銀行の場合、一部引き落としのできない公共料金も残っていて、無料ATMも主にスーパーの中に限られ、不都合な点も多い。各銀行間の競争も激しく、休日夜間の引き出し手数料無料が進んだ流れの中で、各従業員からみれば、なかなかメリットが見いだせないというのが本音だろう。
今年は例年になく、会社の要求と、個人が持つ本来の考えとの間で当面板挟みとなる、暑い夏となりそうだ。
(記者:吉永 公平)
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