2008年07月16日(水) 18時05分
台湾バナナはなぜ消えたのか?(ツカサネット新聞)
生まれは台湾台中の、阿里山麓の片田舎。
金波銀波の波超えて、ようやく着いた門司港。
そんなタンカバイでお馴染みのバナナ。かつては台湾産と相場が決まっていた。あのねっとりしたコクのある味は、言葉には表現しがたい満足感を私たちに与えてくれた。ところが、最近の青果店やスーパーに並ぶバナナは、ほとんどがフィリピンや南米産である。
「バナナ大学」によると、我が国で消費されるバナナの90.5%はフィリピン産。次いでエクアドル産が5.4%あり、台湾産は1.9%まで減ってしまった。小ぶりの台湾バナナに比べると、フィリピン産は大房肉厚のイメージがある。それもまた悪くはないが、片手で収まる台湾バナナも忘れられない。
いったい、台湾バナナはどうして姿を消してしまったのだろうか。関係者に直接お伺いした。ライフコーポレーション・お客様相談室は次の5点を指摘する。
・台湾の労働コストが高くなってきたこと
・台湾の需要が上がっていること
・輸出価格より国内価格のほうが高いこと
・地域的に台風が多いが、フィリピンや南米はほとんどないので供給により安定感があること
・台湾経済が以前よりもよくなっており、バナナばかりでなく他の産業にも力が入れられていること(農場が減少)
おそらく、この5点に尽きるのだろう。台湾経済の向上によるコストの上昇はいかんともしがたい。
ただ、経済的な問題と、品質に対する人気は別問題である。「台湾産は特別な風味を持っていますので、3〜7月には入荷し、価格は高いですが特定の消費者の支持を得ています」(ローヤル・食品安全管理室)という回答もあった。
フィリピンや南米のバナナと台湾のバナナは種類が異なる上に、栽培される気候や土地の違いもあるため、それぞれ特徴がある。たとえば、台湾産は冒頭に書いたようにねっとりした感じがあるといわれる。それに対してフィリピン産は、高地のものをのぞくとさっぱりとした食感といわれる。「特別な風味」とは、その「ねっとり感」にあるのだろう。
現在、もっとも出荷の多い品種は、フィリピン産の「スウィーティオバナナ」だが、これは我が国の消費者向けに品種改良されたものだ。海抜約500メートル以上の高地で栽培。高地は昼夜の寒暖差が激しく、その温度差によって糖度が高くコクのあるバナナができる。さらに、通常のバナナが約10ヶ月かけて栽培しているのに対し、平均15ヶ月かけて栽培しているため、果肉が密につまったもっちりとした食感のバナナが実るという(ドールお客様相談室)。
食肉和牛もそうだが、ゆっくり育てたのと急いで育てたのは、同じ質量でも中身がまるで違うのだ。「ねっとり感」と「もっちり感」は微妙に違うのかもしれないが、中身が詰まっている濃密な果肉という点ではひとつにくくれるだろう。時代が移り、産地は変わっても、バナナに対する思いは受け継がれているということだろうか。
私が子どもの頃は、バナナといえば高級品だった。それが最近では品種が増え、安いもののたとえ通り「ひと山100円」で買えるものもある。歌は世につれというが、バナナも時代とともに変わって行くもののようだ。しかし、あのコクのある味だけはいつまでも不滅であって欲しい。
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バナナ大学
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ライフ・コーポレーション
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ローヤル
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ドール
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(記者:顰見倣)
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