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2008年07月15日(火) 18時27分

iPhoneが売れない=日本の携帯の勝ち……ではないツカサネット新聞

iPhoneが発売された。そこで話題になっているのが「日本でヒットするか」という事なのだが、意外な程に否定的な意見が多い。

特に多く目につくのが、お財布ケータイ機能やワンセグがついていないから不利であるという指摘だ。私自身はお財布ケータイ機能に必要性を感じない。むしろ、携帯に「お金」の機能を付け加える事には不安を感じる。

重要なものを1つにまとめてしまうと、一見便利だが、例えば落してしまった時や盗まれた時のダメージが大きい。私は日常でも財布とは別に手帳や鞄に緊急用の現金などを用意しておくのだが、そういった分散が必要なレベルの機能を携帯に盛り込んでしまうのはどうなのだろう?

お財布機能が携帯についた所でそれほど便利になるものだろうか? バッテリーが途中で切れてしまった場合の対処法等を読む限り、何かのエラーが発生した場合のストレスはかなり大きいと予想される。

ワンセグにしても、出先でそれほどテレビを見なくてはならない事があるだろうか? 私の場合、ワンセグがあれば良かったのにと思った事は一度も無い。電車に乗っている最中に使うと仮定して、出発時間も到着時間もテレビのスケジュールとは一致しないのだから、落ち着かない。

そもそも、読者の方々にお聞きしたいのだが、携帯のお財布機能を日常的に利用している方はどのぐらいの割合でいらっしゃるのだろう? 私の周囲で利用しているのを見た事は一度しかない。お財布ケータイの普及率に比べてお財布機能の利用率は十分に高いのだろうか?

客観的なデータを用意出来なかったので、お財布ケータイやワンセグ機能の有無がiPhoneにとって大きな障害になるかどうかについては何とも言えない。

しかし、もしもそれらが大きな障害となって、日本の携帯がiPhoneに勝つ結果になったとしても、それだけでは日本のケータイ市場にとって明るいニュースにはならない。

多機能を、日本市場参入の障害としてしか使えないのであれば、結局は「鎖国状態」になるだけの事で、海外企業の侵攻に怯える事はなくても、世界に打って出る事もまた出来なくなるからだ。

お財布ケータイが本当に消費者に支持され、便利だというのであれば、そのライフスタイルを世界に売り込んで行けば良いのだ。内蔵されたICチップも売れるだろうし、決済の手数料やシステムの使用料を得るといった展開も考えられる。

ワンセグにしても同じ事だ。海外に広く受け入れられれば、市場規模は一気に拡大し、その根幹技術を握る事による利益は膨大なものとなるだろう。

もちろん、これは簡単な事ではない。お財布機能にしろワンセグにしろ、規格を世界に展開するとなれば、技術的な問題よりも政治的、制度的な問題が大きくなってくる。

だが、ここで戦略的に世界に打って出なくては、そのうちに日本をお手本にした「世界統一規格」を、日本ではないどこかの国の企業が主導して確立してしまうだろう。

そうなってしまったら、せっかくのチャンスを逃すだけでなく、元々は日本で発案されたアイデアを真似た世界統一規格に、日本市場が征服されるという結果になりかねない。そういった危機感が見られない所に私は不安を感じる。

iPhoneを目に見える製品の部分だけで見ていると、その本質は見えないだろう。iPhoneはAppleの「戦略」の一部でしかない。戦術だけでは戦略に打ち砕かれる事は歴史が証明している。

日本のケータイが誇る「お財布」や「ワンセグ」にAppleに匹敵する戦略は感じられない。

世界22カ国への展開を、しかもAppleが主導権を握るカタチで成立させてしまうという事の裏には何が必要なのかを想像してみれば、世界で一番進んでいるとふんぞり返っていた日本のケータイ業界が、実は戦々恐々としている理由も見えて来るだろう。



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(記者:花田 昌幸)

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