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2008年07月14日(月) 12時09分

<布川事件>警察の「正解」通り誘導 桜井さんと杉山さん毎日新聞

 「布川事件」の第2次再審請求で、東京高裁は14日、水戸地裁土浦支部の再審開始決定を支持し、検察側の即時抗告を棄却した。桜井昌司さんと杉山卓男さんは、茨城県警の捜査員や水戸地検の検事から「自白を強要された」と主張する。自暴自棄になり、知りもしない現場の状況を「自白」しようとすると、捜査員からは「違う」と言われ、相手の求める「正解」に誘導されていったと証言する。

 桜井さんは取り調べの当初、否認したが「母ちゃんも早く自白してくれと言っている」と聞き入れてもらえず、朝から深夜まで同じ問答が続いた。「家族にも見放されたと、絶望的な思いだった。認めないと終わらない。作り話でしのごうと考えた」。現場の状況や服の色が分からなくても、相手の求める「答え」にたどりつくまで「勘違いだろ」と言われた。自白は「捜査員と共同作業をしているような気がした」。

 杉山さんも「認めないなら死刑だ」「桜井は杉山とやったと泣いて謝っている」と連日、捜査員から攻め立てられた。「刑事は駄目だ。検事なら分かってくれる」と思ったという。被害者から奪った現金は、最初は「400万円」と供述したが、捜査員に「多すぎる」と言われたため「数千円」に変更。今度は「少なすぎる」と指摘され「10万円くらい」とした。

 杉山さんは検事に否認調書を取ってもらった。しかし、拘置所から警察署に戻され、別の検事から「お前の話には根拠がない」と突き放されたという。

 当時、事件を担当した茨城県警の元捜査員は、毎日新聞の取材に「多少、強引な捜査も許容された時代だった。(布川事件は)今も、もやもやが心に残っている」と振り返った。「2人が犯人と思うか」と質問すると、黙って下を向き、首を横に振った。

 自白が唯一の直接証拠だった事件。2人が供述していなければ、強盗殺人罪に問われなかった可能性がある。【山本将克、清野崇宏】

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