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2008年07月09日(水) 19時34分

一般競争入札の裏に潜むもうひとつの大問題オーマイニュース

 現在、談合防止の観点から、公共建設工事のほとんどが一般競争入札を採用しています。このため、事前に話し合う談合については情報が漏れやすいため、談合を起こしにくい環境になっているといえます(ただし、いまだに談合は存在していますが……)。

 しかし、この一般競争入札には大きな問題が存在します。それは低価格で入札する、いわゆる「ダンピング問題」です。公正取引委員会では、ダンピングを「不当廉売」と位置づけ、規制、監視を行っています。

 公正取引委員会は7月8日、各都道府県から集められた低価格入札価格調査の対象となった工事について情報を収集した上、調査したものを公表しました。

 それによりますと、国・自治体の発注者から約2000件(約1100社)の情報提供があり、これら情報に基づき、地域において有力な事業者や、低価格入札によって複数の物件を受注している事業者など83社に対し、公正取引委員会(公取委)は調査票を送付し、受注物件の損益状況について報告を求めました。

 そして、落札価格が実行予算上の工事原価を下回る価格かどうか、下回り方の程度、落札率の低さ、低価格入札による落札の頻度・規模などを勘案して、奥村組、オリエンタル白石、戸田建設の3社にしぼって、4月以降に事情聴取した上で、これら3社に対し、独占禁止法に違反(不当廉売)するおそれがあるとして警告しました。

 一般には「安く買えればそれでいいのでは?」と思われているのかもしれません。けれども、ダンピングというのはたいてい、大企業などが中小企業をつぶす目的で、通常よりも安い価格で販売などをして、競争相手の経営を成り立たなくさせようとする行為なため、独占禁止法は禁止しています。

 また、ダンピングの価格で公共建設工事を受注しますと、次年度以降の入札価格に影響を与え、次年度以降の建設工事業者が大幅な低価格で受注しないと落札できないという懸念もあります。

 確かに談合は悪であり許される行為ではありません。しかし、一方で、このような不当廉売が横行しているのも事実です。

 ただ、官庁での統制価格はそれこそ官製談合防止法に違反する行為であり、禁止されています。また、不当廉売の事案についても、正面から、競争者を排除する目的でする行為というよりは、ここは一番奮発して実績をゲットしたい、といった通常の商行為に見られる白黒つけがたい理由も存在し、非常にセンシティブな話です。

 談合、不当廉売の両方を取り締まる公正取引委員会のかじ取りに期待したいものです。

(記者:山田 太郎)

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