2008年07月08日(火) 15時54分
女性強殺事件 佐賀地裁判決 自白DVD信用性認めず 強盗目的否定、懲役18年(産経新聞)
佐賀県唐津市で昨年12月、借金返済を迫る元交際相手の女性を殺害したとして、強盗殺人などの罪に問われた元会社員、岩本朋宏被告(23)の判決公判が8日、佐賀地裁で開かれた。公判では捜査段階の自白の信用性を補強するため取り調べ状況を録画したDVDが再生されたが、若宮利信裁判長は「25分程度の取り調べ状況を明らかにしただけで、信用性は裏付けられない」と判断。強盗目的だったと自白した供述調書の信用性を否定して殺人罪を適用し、懲役18年(求刑無期懲役)を言い渡した。
公判では借金の返済を免れる目的で殺害したかどうかをめぐり、自白の信用性が争点になった。検察側は通常は供述調書の任意性の立証に用いる取り調べ録画DVDを、信用性補強のために全国で初めて法廷で再生。被告が調書に署名し「(殺せば借金を)払わなくていいと思った」と供述する場面などが上映された。
若宮裁判長は判決理由で、被告の警察官調書について「『頭に血が上った極限状態』と記載されているにもかかわらず、『借金が両親に知られる』などの詳細な事情に思いをめぐらせたというのは大いに疑問があり、警察官の後付けとの疑いをぬぐえない」と指弾。
検察官調書に対しても「検察官の強い口調に迎合した可能性を否定できない」と批判。殺害の動機は「被害者から妻と交際期間が重なっていたことを責められ、感情のおもむくままに首を絞めた」と認定した。
判決によると、岩本被告は昨年12月2〜3日、唐津市の市道脇に止めた車内で、借金返済を要求する元交際相手の飲食店店員、蒲原由美さん=当時(21)=の首を手で絞めて殺害、畑に遺体を遺棄した。
閉廷後、弁護人は「取り調べの全体の流れが分からない一部分の録画では意味がないことが示された」と話した。
佐賀地検の渡口鶇次席検事の話「強盗殺人罪が認められず、意外な判決だ。控訴については上級庁とも協議して考えたい」
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【用語解説】取り調べの録音・録画
審理の迅速化が求められる裁判員制度の導入を控え、自白調書の任意性をめぐって検察側と弁護側で「水掛け論」となるのを防ぐために、平成18年8月から東京地検で始まった。現在は全国50地検すべてに拡大、裁判員裁判の対象事件は原則全件で行われている。最高検によると、3月末までに計約390人の被告らに実施され、任意性立証のために法廷で再生されたケースは6件。5件では裁判所が任意性を認める判断を示したが、残る1件は「任意性に疑いがある」として、調書の証拠請求が却下された。信用性補強のための再生は佐賀地裁の例だけ。
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