2008年07月04日(金) 17時32分
強い3歳馬が続々誕生、凱旋門賞は彼らが制す?(オーマイニュース)
欧州クラシックで当初注目されていたのは、2歳時、5戦5勝、G1を2勝し、2007年度欧州2歳チャンピオンとなっていたニューアプローチだった。ガリレオ(アイルランド産)の子で、半兄に日本のG1級レース高松宮記念を勝ったシンコウフォレストがいることから、日本でも注目されていた。
しかし、3歳初戦に選んだ2000ギニー(芝8ハロン直線のみ、英G1/5月3日)の前に立ちはだかったのがヘンリーザナヴィゲーター、日本でも有名な種牡馬キングマンボ(アメリカ産、エルコンドルパサー、キングカメハメハの父)の子である。
直線だけのコースをニューアプローチがスピードを生かして逃げ切りを図るが、後方から徐々に進出してきたヘンリーザナヴィゲーターが残り半ハロンでニューアプローチに並びかけ、そのまま2頭のたたき合い。結局ハナ差でヘンリーザナヴィゲーターが勝利した。
雪辱を期してニューアプローチはアイリッシュ2000ギニー(芝8ハロン、アイルランドG1/5月24日)に臨んだ。言いわけのできない5頭のみの競馬。途中まではニューアプローチが逃げ、ヘンリーナヴィゲーターが3番手という競馬。残り2ハロンあたりでヘンリーナヴィゲーターが苦労して外に出し、2着となったニューアプローチに1馬身以上の差をつけた。
打倒ヘンリーナヴィゲーターに燃えるニューアプローチ、次の対戦はもちろん伝統のダービー(芝12ハロン10ヤード、英G1/6月7日)と思われた。ダービーの舞台エプソム競馬場は本番まで1週間ほど雨。この雨で馬場が柔らかくなったことを歓迎したのがニューアプローチ、逆に嫌がったのがヘンリーナヴィゲーターだった。結局、ヘンリーナヴィゲーターは回避。
とはいえ、相当な距離延長、しかもエプソムのタフなコースを逃げて勝つわけにもいかず、ニューアプローチは後方からの競馬。これが気に入らないのか、相当折り合いが悪かったというか、とにかくレース中なのに暴れんばかりの彼だったが、結局しっかりと末脚を生かして先頭、優勝したのだから、潜在能力はやはり相当なのだろう。
その後、ニューアプローチは父ガリレオ以来のイギリス・アイルランドダービー制覇を目指して再びアイルランドに。しかし、脚(ひづめらしい)を痛めてしまい、出走取り消しとなった。この原稿を書いている時点では、深刻な症状ではなさそうということだが……。
結局アイリッシュダービー(芝12ハロン、アイルランドG1/6月29日)を勝ったのは名匠オブライエン調教師が送り出したフローズンファイア。父はモンジュー。この馬も直線で内に外に大きく振られながら1馬身抜け出したのだから、なかなか強そうだ。
一方、ヘンリーナヴィゲーターは「ロイヤルアスコット」(英王室主催のアスコット競馬場での競馬)のなかのセントジェームズパレスステークス(芝8ハロン、英G1/6月17日)で鋭い末脚を使って勝利。これからは8ハロン=マイル路線を中心に使うことになるかもしれない。そうするともうニューアプローチとの再戦はないのか。
いずれにせよ、イギリス・アイルランドの2000ギニーとこのレースを勝ったのはロックオブジブラルタル(2001年)以来の快挙。ロックオブジブラルタルのその後の活躍(G17連勝)を考えると、この馬の能力は相当なものがあるかもしれない。ちなみに父キングマンボもこのレースを勝っているので親子制覇となった。
仏ダービーに相当するジョッキークラブ賞(芝2100m、仏G1/6月1 日)は無敗のヴィジオンデタ(父チチカステナンゴ)が勝利。牝馬としてただ1頭挑戦したナタゴラも3着に粘った。ナタゴラはこの前に1000ギニー(芝8 ハロン、英G1/5月4日)を勝っている。父は日本産ディヴァインライト(父サンデーサイレンス)。
しかし、この馬よりも強いと思わせたのがディアヌ賞(仏オークス、芝2100m、仏G1/6月8日)を無敗のまま制した牝馬ザルカヴァだ。後方5番手くらいから直線やや外目をまわって、一気に差し切る強い内容。スピードも非凡なものがあるようだ。凱旋(がいせん)門賞への出走を示しているが、今年は古馬の層が薄いこと、3歳牝馬は軽量に恵まれること、何よりもホームの利があることから、実はこの馬が今年の凱旋門賞の最有力候補なのかもしれない。
【注】国によってヤード法、メートル法の違いがあり、距離は主催者発表通りに表記。1ハロンはおよそ201メートル。なお、日付はすべて現地時間。
(記者:辻 雅之)
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