投資会社ワールドオーシャンファーム(東京、破産手続き中)によるエビ養殖投資詐欺事件で、警視庁などの合同捜査本部は二日、組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)の疑いで、同社会長黒岩勇容疑者(59)=住所不定=と長男の厚宏容疑者(28)=さいたま市中央区本町西=ら同社幹部など計十人を逮捕した。
ほかに数人の逮捕状を取っており、近く逮捕する。黒岩容疑者は「だますつもりはなかった」と否認しているという。
ワールド社は「フィリピンでのエビ養殖事業に投資すれば一年で倍になる」と配当金を約束。全国約三万五千人から約八百四十九億円を集めたとされるが、約四百二十九億円が未返還という。
同社が「東京ドーム四百五十個分(約二千百ヘクタール)ある」と宣伝していたフィリピンの池は、実際には三十二分の一の約六十五ヘクタールしかなく、収穫はわずかな量の魚だけだったことも判明。
合同捜査本部は、エビ養殖の実体はなく、集めた金を配当に直接回していたと判断。巨額詐欺商法の全容解明を進める。
調べでは、黒岩容疑者らは二○○七年二月から同五月にかけ、鹿児島県の男性(64)ら三十人に約一億二千万円を振り込ませ、組織的にだまし取った疑い。
ワールド社をめぐっては昨年二月、国内から米国の銀行口座に約四千万ドル(約四十八億円)を送金しており、合同捜査本部は投資金をマネーロンダリング(資金洗浄)しようとした組織犯罪処罰法違反(犯罪収益の隠匿)の疑いでも捜査する。
ワールド社は○一年に栃木県小山市に設立。匿名組合を受け皿に一口十万円で投資を募ったが○七年一月から配当を停止。同七月に警視庁が詐欺容疑で役員宅などを家宅捜索していた。
小山市にある厚宏容疑者のアパートから約六億円、群馬県嬬恋村にある黒岩容疑者の実家の墓から約一億円が、それぞれ見つかったことも判明している。