フィリピンでのエビの投資事業を装った「ワールドオーシャンファーム」(破産)による巨額詐欺事件で、警視庁に組織犯罪処罰法(組織的詐欺)違反容疑などで逮捕された同社会長の黒岩勇容疑者(59)が、集めた資金のうち90億円を「海外に送った」と周囲に話していたことがわかった。同社が集めた資金はその後の調べで、約200億円増え、総額約850億円に上ることも判明。同庁は犯罪収益を隠匿するマネーロンダリング(資金洗浄)のため海外送金をしたとみて調べている。
同庁は2日、黒岩容疑者のほかに、同社資金管理センター長で、黒岩容疑者の長男・厚宏(28)、同社営業部長の山本敬次(74)の両容疑者ら9人を逮捕。同容疑で逮捕状を取った残る8人の行方を追っている。
同庁幹部によると、黒岩容疑者らは昨年2〜5月、「エビ養殖事業に投資すれば1年で元本の2倍になる」などと偽って、30人から計約1億2000万円をだまし取った疑い。同社は2005年春ごろから07年5月末までに全国3万5000人から総額約850億円を集めていた。
同庁幹部の話では、黒岩容疑者は昨年2月、4000万ドル(約48億円)を米国内の会計士の口座に送金していた。この口座は米連邦捜査局(FBI)によって凍結されている。
また、黒岩容疑者が旅券法違反罪などに問われた5月16日の東京地裁の公判では、同容疑者が「投資のため、知人2人を介して計23億4000万円を香港に送金した」などと証言。さらに同社関係者によると、同容疑者は同社幹部や弁護士らに「(集めた資金のうち)合計で90億円は海外に回した」と話していたという。ただ、米国や香港以外の約20億円の送金先は明らかになっていない。
黒岩容疑者らは01年7月、栃木県小山市にワールドオーシャンファームを設立すると、台東区、新宿区と移転させながら、07年2月までの間に同名の会社を港、千代田、品川区に計3社設立。このほか「ワールドオーシャン開発」といった複数の関連会社も作り、それぞれの会社名義で幾つもの口座を開設していた。
出資者からの集金用だけで計9口座あり、米国に約48億円を海外送金した際には、「ワールドオーシャン開発」名義の口座を利用していた。
長男の厚宏容疑者が借りていたアパートの押し入れや、群馬県嬬恋村の黒岩家の墓石の下から計約7億円も押収されており、同庁は、さらに資金の流出先の特定を急いでいる。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080702-OYT1T00965.htm