山中 日本は、全世界の4割(2007年度)を占める最大の市場で、医療、教育、金融、流通、製造、公共サービスなどの分野で利用が拡大しています。
医療分野では病院や製薬会社などでカルテや検査記録のデジタル化に、教育分野では公立学校、予備校で採点や双方向授業などに利用されています。金融、流通、製造、公共サービスの分野では、申込書や保守点検作業報告書の入力などに使われています。
山中 介護分野です。スウェーデンでは、在宅ケアのサービスに導入されています。ヘルパーが訪問先でデジタルペンを使って介護記録を記入することで、その記録が時間情報とともに介護事業所に転送されるので不正防止や効率化に役立っています。記入した紙は依頼人宅に置いておくため、家族にとっても介護サービスの内容が確認できて安心です。デジタルペンはヘルパー側にも特別なトレーニングを必要としません。半年で投資が回収できたところもあるようです。これは今後日本でも普及していく分野だと思います。
ほかには、海外の警察が書類の入力に採用しているケースもあります。
山中 ひとつには金融があります。銀行や信販会社では手書きで入力する部分もまだまだ多くあります。例えば、このたび大手金融機関が導入したデジタルペンシステムは、営業マンが出先でデジタルペンを使って記入したデータを携帯電話で送信、処理できるもので、大幅な業務の効率化が期待されています。
またヨーロッパでは医療分野が大きく伸びています。日本では診療所や病院で既に導入されていますが、今後は大きな病院でも導入されていくのではないでしょうか。
山中 アメリカの玩具ペンは日本ではちょっと難しいかもしれません。むしろ、日本では学校の教室で使われています。単純には言えませんが、ターゲットが少し異なるのではないかと思います。
携帯電話とリンクする仕組みがより進めば、手描きの絵日記を携帯電話に転送するような使い方もできます。そうなれば若い女性や高齢者がターゲットになるかもしれませんね。
法人向けビジネスだけで毎年3割程度の成長が続いています。本当に人気が出れば100万本単位で普及するかもしれません。消費者向けは魅力的な市場ではありますが、充分な準備が必要です。
アノト・マクセルが消費者向けビジネスを直接やるということはないと思いますが、例えばパートナー企業やオペレーターと協力し、我々が後押しをして事業展開していくなどのケースはあり得ると思います。
山中 アノト・コンソーシアムという非営利団体を設立し、アノトの技術や会員企業間の情報交換を進めています。今後はここを通じて対外的な啓発活動に力を入れていこうと考えています。
また、これまではパートナー企業にお願いするばかりで、アノトとしてはほとんど宣伝活動をしてきませんでした。ペン自体も「デジタルペン」とは呼ばれるものの、「アノトペン」とは呼ばれていません。使っている人たちから見ても、アノトのペンだという意識は希薄だったのではないでしょうか。
今後はアノトというブランドをもう少し前面に出して、徐々に宣伝効果を上げていきたいですね。(メディア戦略局 園部友章)
(敬称略)