紙に書いた手書きの文字をそのままの状態でデジタルデータにできる「デジタルペン技術」。この技術を開発したスウェーデン企業「アノト」と日立マクセルが7月1日、新会社「アノト・マクセル」を発足させた。事業の現状と見通しなどを、代表取締役に就任した山中照雄氏に聞いた。
ペンと紙を使ったデジタル技術山中 アノトは1999年、ペン型スキャナーの技術をもとに創業した会社です。アノト日本はその翌年に設立されました。日本社会は、漢字、ひらがな、カタカナなどを駆使するため、手書き文字をデジタル化するアノトの技術を受け入れやすい土壌があると考えたのです。
アノト日本はこれまで、デジタルペン技術のライセンス提供だけを手がけてきました。今回は、デジタルペン本体の製造・販売を行ってきた日立マクセルと合弁で、新会社アノト・マクセルをスタートさせることにしたのです。
山中 まず挙げられるのは市場対応の迅速化です。アノト・マクセルではライセンス提供とデジタルペン事業を一体化することで、開発、生産から販売、サービスまでを展開することができるようになります。例えばペンの色を追加するなど、さまざまな要求に迅速に応えられるようになるでしょう。
これまで同様、中心は法人向けビジネスです。消費者向けは販売の仕方も全然違うため、充分な準備が必要ですし、アノト単独で取り組めるビジネスではありません。法人向けは需給も比較的読みやすいですから、ユーザーからの要求に応えていくことで市場拡大を目指します。
山中 デジタルペンと専用紙、専用ソフトなどを介して、手書きのアナログ情報を瞬時にデジタルデータ化する技術です。ドットパターン(規則的に配列された点)を印刷した紙の上に、デジタルペンで文字や図形を書くと、ペン先に内蔵されたカメラがこれらを読み取り、ペンの位置情報から軌跡、筆記のスピード、筆圧、日時をデータ化します。データはパソコンや携帯電話に転送して記録できるほか、記録した文字や図形の色を変えることも可能です。
似たような技術はありますが、ドットパターンによる位置認識がきわめて正確で、ペンと紙とを直接リンクできるという点が強みです。
山中 アノトはスウェーデン、アメリカと東京にオフィスを構えており、法人向けに限れば全世界で約15万本のデジタルペンが実際に使われています。
アメリカでは子供向けの玩具ペンなど特殊な製品も発売しています。クリスマスに贈りたいプレゼントで米アップル社の携帯音楽プレーヤーiPod(アイポッド)に次ぐ人気商品になったこともあります。こういった消費者向けの製品は、法人向けより一桁多い単位で売れています。