2008年06月26日(木) 15時31分
うつの身内とアフリカへ〜「生きる!」を感じるために(オーマイニュース)
前回 のつづき
6年前に私が1人旅に出たとき、そこに選択肢はなかった。行動を起こそうと思ったものの、どうしていいか分からない。何かはしたくても、その「何か」がまったく分からなかった。それは、私の身内に今起こっていることと同じことが、当時の私にはあった。
そんなとき、私に「ハナ、大丈夫か? うわの空だぞ」と言ってくれた同僚が、私にいくつかのパンフレットを差し出してくれた。海外旅行だ。
5、6冊用意してくれたパンフレットは、私にとっては初めて見るものばかりだった。アジアもあれば、ヨーロッパもある。アメリカ横断もあれば、島国1人ぶらり旅というものもあった。
私が手にしたパンフレットに目を通していると、同僚がこんなことを言ってくれた。
「ハナ、あくまでこれらは選択肢だ。自分がマッチするところがあれば行けばいい。なければないでもいい。大事なことは、もし自分でこれらの世界を体感したら、どんな気分になるか──。そんなことを思うといい」
そのひとことは、私の中での「視点」をガラリと変えるものだった。
「行ったら、自分はどうなるだろうか」
「このパンフレットに映っているものが見られたら、自分はどうなるだろうか」
「そこにいたら私は変わるだろうか」
私の中で、見えなかった出口が、確実に近くなっていく瞬間だった。
◇
あれから6年。今、身内に起こっていることは、状況や背景は異なるものの、抱えている悩みや状態は、当時の私に似ている。「空回り」が続き、自分がどこにいるかが分からない。自分がどこへ行くかも分からない。進む道が分からず、1人で見えない出口を探している状態にある。
私は当時、選択肢がなかった。自分ではただ「何か」を待っている状態にあった。だがそんなとき、差し出してくれたパンフレットと同僚のひとことは、私の背中をさらに押してくれたのは、実感として今でも私の体に残っている。
私は今、あのとき私自身を大きく変えてくれたことを、そのまま身内に指し示している。良いか悪いかの選別ではなく、身内に対して次のヒントになるものを与えている。それをどう消化し、どう次につなげるかは身内次第ではあるが、少なくとも、そこに新たな要素が増え、新たな思考回路が生むと確信している。
そして……。
「ここに行く!」
そう言って、私が示した場所は「アフリカ」である。
今回、選択肢の中に1つだけアフリカ大陸を混ぜておいた。アフリカには、ほかの国や都市にはないものがあると思っている。貧困、飢餓、暴動、そして病気。ほかの国や都市に比べても、断然に違いがある。アフリカとは言え、その差は国によっても大きくと異なる。
私は、アフリカに身内を連れていくことを決めた。と言うのも、大きな学びや背中を押してくれるものがあると思っているからだ。
「生きる!」
アフリカ(サハラ以南)では今、3億人が1日1ドル以下で生活をしていると言われている。平均寿命は50歳を切り、6人に1人が5歳前に亡くなっている。
では、私たちはどうか。無論、そのようなことを考えたこともない。頭をかすめる毎日を送ったこともない。だから、である。
「生きる」というのは一体どういうことか。ここが大事な部分だ。「生きること」にどん欲になることができるかどうかが、この「うつ」を治す最大の術だと私は思っている。五感をフルに反応させ、自分で知ってほしい。自分でつかんでほしい。「生きている」自分を見つめてほしい。「生」を感じることこそが、「うつ」の解決策だと思っている。
◇
私は、身内とともにアフリカに行く。すでに日程も決まった。準備も整った。あとは出発の日を待つだけである。正直、この先何が起こるか分からない。どうなるのかもまったく分からない。身内自身がどう受け止めるかも分からない。
だが、1つだけ言えることがある。
「人ごとととらえず、自分のことととらえること」
そう思ったとき、私は何でもできるということだ。身内のために、そして大切の人のために、この考えがある限り何でもできるのだ。
未知の世界に、必ず「大きな希望」が待っている。そう思っている。
(記者:花嶋 真次)
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