早世のロック歌手、尾崎豊さん(1965〜1992)の歌をテーマに油絵を描き続けてきた竹田幸子さん(79)(足立区扇2)が、尾崎さんの十七回忌に合わせ、来月1日から区こども科学館(栗原1)で個展「尾崎豊17回忌追悼展」を開く。「尾崎の歌は私たちが忘れかけた心をよみがえらせてくれる」。個展では、今なお人気の衰えない尾崎さんの魅力をキャンバスに表現した新作など約20点が公開される。(岩永直子)
竹田さんが、初めて尾崎さんの歌を聞いたのは1992年4月。当時62歳だった竹田さんは、再婚相手を2年前にがんで失い、孫の絵でも描いて余生を過ごそうと考えていたころだった。尾崎さんの急死を報じるテレビで、代表作の一つ「I LOVE YOU」が流れていた。
不思議なほど涙があふれ、「大事な人を失ってしまった」という深い悲しみに襲われた。
〈悲しい歌に 愛がしらけてしまわぬ様に〉
繊細な声、美しいメロディー。そして、何よりも、その歌詞が心に響いた。
以来、CDや歌詞集、写真集などを集めた。すべての歌詞が、社会の底辺であえぐ人の目線で書かれていることに、ますますひかれていった。
竹田さん自身、30歳を過ぎて北海道から上京し、早朝から深夜までサンダルのミシンがけの内職をこなした。最初の夫と別れて女手一つで娘を育てる苦しい生活。生活保護に頼ったこともある。大好きだった絵も封印した。再婚相手も病気になり、長い介護のかいもなく亡くなった。
そんな時、出会ったのが尾崎さんの歌だった。生きる苦しさやもがく思いを表したこの歌の世界を何とか表現したいと、数十年ぶりに絵筆を執った。
絵は、歌詞の内容に合った尾崎さんの肖像画に抽象的な背景を描き込む独自のスタイル。尾崎さんの残した71曲中、イメージが膨らむ60曲をテーマに描いた。
これまで、七回忌、十三回忌など節目ごとに開いた展覧会には全国からファンが集まり、思いを語り合うファンの会も作った。絵の多くはファンに譲った。
「尾崎は私たちに大切なものを残し、それは永遠に古びることはない。私は彼から受け取ったものを絵で広めたい」と、竹田さんは話す。追悼展は来月1日から5日まで。入場無料。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/tokyo23/news/20080625-OYT8T00473.htm